「最近、なんだか祖父母に元気がなくて心配……」という人はいませんか?
「何か楽しくなるような、元気づけられる方法があれば……」と悩んでいるかもしれませんね。そんな人には、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。それは「高齢者の“推し活”にはいろんな可能性がある!」ということです。
推し活で高齢者を心身ともに元気にすることを目指している20代の女性リーダーに話をうかがいました。
■高齢者をサッカークラブのサポーターに!?
今回話をうかがったのはサントリーウエルネス経営企画本部の吉村茉佑子さん(28)で、『Be supporters!』というプロジェクトを推進しています。
「Be supporters!(Beサポ!)は、普段は支えられる場面の多い高齢者施設の高齢者や認知症の状態にある方が地域のサッカークラブのサポーターとなることで、クラブや地域を“支える”存在になることを目指すプロジェクトです。2020年12月から、サントリーウエルネスがJリーグの複数のクラブと協働して始めました。現在『いくつになってもワクワクしたい、すべての人へ』をコンセプトに活動を推進しており、2021年にはカターレ富山で30施設・延べ1,000人、2022年には10クラブで100施設・延べ2500人が参加しました」
サッカークラブのサポーターとなって応援活動に取り組むことで、応援の翌日や翌々日には血圧が安定したり表情が豊かになったりする方が出てくるほどなんだとか。さらに、施設職員たちからは「食欲が増えた」「観戦の後はよく眠るようになった」「要介護度が3から1に改善したように見えるほど元気に」「家に帰りたいという帰宅願望を聞かなくなった」などの声もあるそうです。サッカー選手の“推し”を見つけて応援することで、高齢者の方々がいろいろな人と繋がってアクティブになった結果、そのような変化が起きているようです。
吉村さんは祖父母が大好きだったことから、大学院でアルツハイマー病に関しての研究を始めましたが、いつしか研究の道は自分には向いていないと感じてサントリーに就職したそうです。でも、「世界中のおじいちゃんおばあちゃんを元気にしたい」という思いは変わらず、社長に直談判し、Beサポ!プロジェクトメンバーに立候補したとのこと。その後、メンバーと共に徐々に活動を広めていきました。
サントリーウエルネスは健康食品を提供する会社ですが、人生100年時代に「予防」だけではなく病気とともに生きる「共生」にも向き合うことが社会的責任であるという信念のもとにこのプロジェクトを立ち上げており、吉村さんもそのような会社の姿勢に深く共感しているそうです。
「どなたでも気軽にBeサポ!に参加できるよう、応援プログラムを開発しました。具体的には、試合前に『お気に入りの選手を決めよう』『サポーターの応援練習をしよう』『施設をクラブ色に染めよう』、試合当日は『サポ飯を作ろう』、試合後は『観戦日記を書こう』などです」(吉村さん)
■高齢者に推し活を勧めるには?
この推し活、ぜひ自分の祖父母にもやってもらい、イキイキと過ごして欲しいですよね。では、どんな働きかけをしたら興味を持ってもらえるのでしょうか?
「このプロジェクトのポイントの一つは、高齢者が推しの存在を見つけて主体的にかつ自由に応援することで誰かと繋がり、心がワクワクすることだと思います。ある高齢者施設で、職員の方が応援の輪に入れていない利用者さんに、『このユニフォーム着てみますか?』というちょっとしたお節介で声をかけました。その方は目を輝かせて、『うん』とうなずき、そこから毎回応援を楽しみにして、お花見にもユニフォームを着て行かれたほどです」
「このプロジェクトを始めたとき、周囲からは『高齢者の方は野球や相撲にしか興味がないのでは』と言われていましたが、いざサッカーの応援を始めてみると、これだけ多くの高齢者の方々が皆さん思い思いに楽しんでいらっしゃいます。大切なのは『推し活をしよう』という働きかけではなく、高齢者の方々の可能性を決めつけることなく、ちょっとしたきっかけを作ることから始まるのではないかと思います」と吉村さん。
いかがですか? 自分の祖父母にもその可能性は無限にあるはずです。孫の立場として、何かワクワクするようなことを祖父母に声がけしてみてはいかがでしょうか。