早すぎる退場に、視聴者も涙をこらえられなかったようだ。
4月7日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第5回では、主人公・槙野万太郎(森優理斗)の母親・ヒサ(広末涼子)が闘病の末、亡くなることに。その間際に交わされた母と息子の会話に、涙腺の崩壊する視聴者が続出していた。
万太郎は神社の結界を超え、母親の好きなバイカオウレンを探していた。やっとのことで見つけだし、泥だらけの姿で母の病床に戻るものの、摘んできたのはセツブンソウと思しき別の花だったのである。
万太郎は「お母ちゃんが好きな花、採ってこれんかった」と泣きながら落胆。ここで目を覚ました母親のヒサは「キレイだねえ」と話しかけ、「春になったら、お母ちゃん、あそこにおるきね。また会おうね」との言葉を遺し、旅立ったのだった。
「バイカオウレンは春の花。ヒサが亡くなった11月には咲いているはずもありません。それでも万太郎が必死になって探してきた可憐な花に込めた思いは、死の淵にあったヒサにもしっかりと届いたはず。万太郎は今後、バイカオウレンを見るたびに、ヒサが近くにいることを感じることでしょう」(テレビ誌ライター)
すぐにも亡くなるであろうヒサを広末が演じることについては「広末涼子の無駄遣い」との声もあった。しかし、これほど感動的な別れのシーンを見せられたら、この筋書きに納得した視聴者も多かったのではないだろうか。
だが一方では、第5回の終わり方が感動的だったからこそ、今後の展開に警戒心を抱く朝ドラファンもいるという。それは前作の「舞いあがれ!」に理由があるというのだ。
「身勝手すぎるヒロインが大きな批判を浴びることとなった『舞いあがれ!』でしたが、ヒロインの岩倉舞を子役の浅田芭路が演じていた序盤の『五島編』は、感動作との呼び声も高かったもの。それゆえ子役が主人公を務める序盤の出来栄えは、作品全体の良さを担保するとは限らないとして、今後の出来栄えに警戒する視聴者も少なくないのです」(前出・テレビ誌ライター)
「舞いあがれ!」の第5回では、舞を転地療養させるために故郷の長崎・五島に連れてきた母親のめぐみ(永作博美)が、祖母の祥子(高畑淳子)から過干渉だと咎められることに。その結果、めぐみは舞を島に置いて一人で東大阪に戻っていった。
港で見送った舞は、めぐみがフェリーの船内に消えてからボロボロと泣き出すことに。母親に心配をかけたくないと涙をこらえていた姿には、視聴者もつられ涙を誘われていたものだ。
そして今作の「らんまん」でも第5回では、親との別れで主人公が涙を流すことに。別れの辛さが吹っ切れた後に笑顔を見せていた点もまた「舞いあがれ!」との共通点だと言えるだろう。
「親子の別れは普遍的なテーマゆえ、2作連続で描かれること自体は決して不自然ではありません。ただ『らんまん』の場合、母親との別れが『舞いあがれ!』と同じタイミングの第5回で描かれており、子供の涙が感動的だった点も一緒なことから、今後の展開まで同じようになるのではと警戒心を高める視聴者がいるのも無理はありません」(前出・テレビ誌ライター)
果たして「らんまん」の槙野万太郎は、身勝手な主人公となってしまうのか。それとも観る者を惹きつける魅力にあふれた人物として描かれるのか。わがままな主人公はもうたくさんだという視聴者は、今後の展開を注視しているに違いない。