まさか出番はこれだけ!? そういぶかしむ視聴者も少なくなかったようだ。
4月28日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第20回では、主人公の槙野万太郎(神木隆之介)がジョン万次郎こと中濱万次郎(宇崎竜童)に出会い、感動する場面が描かれた。だがその場面には史実に反するシーンが散見されたという。
冒頭で万次郎は自らが「ジッパニゼ」と呼ばれていたと告白。またシーボルトのことを「ズィーボルト」と呼んでいたが、その両方とも発音がおかしいという。
「万次郎は耳から英語を覚えていたため、ウォーターを『わら』と表記するなど、実際の発音に近いカナに置き換えていました。そうなると『ジャパニーズ』がジッパニゼと“e”の母音で終わることはあり得ませんし、『シーボルト』(Siebolt)も英語話者は『スィーボウルトゥ』と発音するので、ドイツ語風にズィーボルトと呼んでいたのは明らかに不自然です」(アメリカ在住歴を持つライター)
そもそも万次郎が「ジッパニゼ」という単語を使った記録もなく、どうやら本作における創作エピソードなのだろう。とはいえ万次郎自体は歴史上の人物として相当に有名なのだから、こんな適当な創作でお茶を濁すのは万次郎に対して失礼というものではないだろうか。
それに加え、50代の万次郎は東京にいたはずで、土佐で政治結社・声明社の顧問的な存在でいること自体も史実に反している。もう一度捕鯨船に乗ってクジラを追いたいとつぶやいた場面についても、実際には小笠原諸島付近に航海に出ていた記録があるようだ。
また一方では、万次郎を演じる宇崎に対しても、今回のエピソードは失礼にあたるとの指摘もあるという。
「万次郎のような著名人を、主人公に影響を与えた人物として使い捨てにするのは、さすがにいかがなものでしょうか。同様の例には第1週に登場した坂本龍馬(ディーン・フジオカ)も該当しますし、序盤の4週間で早くも二人目の使い捨てなのかと呆れますね」(テレビ誌ライター)
主人公の生きざまを描くために、周辺の人物を使い捨てにする。そんな安直な演出を目の当たりにした視聴者からは、2作前の「ちむどんどん」を思い出すとの声もあがっている。
その「ちむどんどん」と言えば、あまりに身勝手なヒロイン・比嘉暢子の振る舞いが物議をかもし、史上最悪の迷作朝ドラと酷評されたもの。この「らんまん」でも主人公・万太郎の身勝手さが目立ち、「ちむどんどん」の再来と評する声もある。それに加えて周辺人物の使い捨てまで似ているというのだ。
「暢子が結婚相手の母親を説得する際には、昔食べていた物の記憶が大事だと気づきました。そのきっかけは母親を亡くした父娘が暢子の働くレストランを訪れたこと。その父親を演じたのは人気声優の高木渉で、暢子の結婚を後押しするためだけに使い捨てされた形です。また終盤では暢子の母・優子が沖縄戦で逃げ回っていた時、離れ離れになった姉の最期を看取った男性が娘に連れられて登場。その男性と娘を演じたのは草刈正雄と草刈麻有の父娘であり、ここでも名優の無駄遣いと批判されていました」(前出・テレビ誌ライター)
そんなキャラの無駄遣いがまたもや朝ドラで再現されることに。この調子では今後も、様々な人気俳優が「ゲスト出演」で使い捨てされるのかもしれない。