7月4日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第80回では、女優の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)が無頼鮨の大将・梅頭(ピエール瀧)を皮肉る場面があった。その内容に世代が表れていたという。
お座敷に座るひろ美が何かを頼むたび、カウンターから無言で笑顔を見せる大将。三度目の笑顔にひろ美は「何、あれ? 小林薫のつもりかしら…」とつぶやいていた。この場面、若い視聴者にはなぜ俳優の小林薫を引き合いに出すのか、ピンと来ていなかったようだ。
だが本放送された2013年当時に40代以上だった視聴者には、なるほどと思った人も多かった様子。ひろ美などの主要人物に近い年齢ではなおさらだったという。
「小林は昭和61年(1986年)にNHKで放送されたドラマ『イキのいい奴』にて、辰巳鮨の親方役で主人公を務めていました。同ドラマは人気を呼び、2年後には続編も制作されています。これらのドラマが放送された当時、ひろ美らは若手芸能人として活躍したばかりであり、寿司屋の大将と言えば小林薫というイメージが強かったのです」(テレビ誌ライター)
鈴鹿ひろ美は昭和40年(1965年)生まれの設定となっており、昭和39年生まれの薬師丸とほぼ同年齢だ。またアイドルを目指していた春子は、演じる小泉今日子と同じ昭和41年生まれであり、これまた駆け出し時代に「イキのいい奴」を見ていた世代なのである。
さらに言えば、無頼鮨の大将を演じるピエール瀧は昭和42年生まれ、芸能事務所社長の荒巻を演じる古田新太は昭和40年生まれで、「あまちゃん」の東京編を飾る主要人物は揃いもそろって同世代なのである。
「登場人物と同世代の視聴者にとって、寿司屋の大将と言えば小林薫というイメージだったのでしょう。脚本を担当した宮藤官九郎は昭和45年生まれで薬師丸らに比べれば少々若いものの、『イキのいい奴』をリアルタイムで観ていてもおかしくない年齢。このように今回のネタは、昭和60年ごろの芸能界を色濃く反映していた形です」(前出・テレビ誌ライター)
昭和世代の視聴者にとってはなんともたまらないネタになっていたようだ。