9月13日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第141回では、女優の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)が結婚を発表することを決意。そのお相手は、オフィスハートフル社長の“太巻”こと荒巻太一(古田新太)だった。
二人が付き合い始めたのは平成元年(1989年)のこと。春子(小泉今日子)が歌手になる夢を諦め、タクシー運転手の正宗(尾美としのり)と結婚した年だった。そこから実に23年間にわたってひろ美と太巻は内縁関係を続けてきたのである。
そんな二人がここにきて結婚することを決意したのは、震災の影響だった。ひろ美が「ふと我に返って残りの人生を想像したとき、なんだろう…。うふふふ、そばにいてほしいなあって思ったんです」とのろければ、太巻も「お互い自然にそう思えたんです」と呼応していたのである。
「そんな二人に正宗は『震災婚ですね。流行ってるんですよ、いま』との感想を口にしていました。実際に震災後には震災婚や絆婚といった単語がメディアを賑わせるようになり、ひろ美と太巻のように長年交際してきたカップルが結婚に踏み切るケースも散見されたのです」(芸能ライター)
当時の報道を見ると、20~30代の独身女性には結婚願望や早婚願望の強まった人が多かったという。なかには震災がなかったら一生結婚しなかったという人もいたほどで、震災が結婚のきっかけになっていたのは一つの事実のようだ。
作中でも二人の結婚を報じるスポーツ紙には「23年越しの愛実らせ、震災婚」との見出しが躍っていた。その記事は最後「震災後に結婚…まだ増えそうだ」と締めくくられており、世間的にも震災婚という言葉が一般化していたことを示している。
だが、そんな流行り言葉とは裏腹に、実際の結婚率は震災後に下がっていた。なにしろ2011年の婚姻件数は、戦後最低を記録していたのである。
「震災婚の効果は実際に発生しており、結婚相談所大手の『オーネット』によると震災後は成婚率が上昇していたそうです。それに対して震災を理由に結婚を延期したり、躊躇した人たちが多かったことも事実。それに加えて、離婚を意識するようになった人たちもまた増えていました」(前出・芸能ライター)
被災地では震災後に離婚件数が減っていたが、理由としては生活面での不安が大きいからとされている。ただ一方では離婚相談の件数も増えていたという事実も見逃せない。
それは地震に直面した際の行動が原因の一つだったようだ。当時の報道によると、夫が自分だけ助かろうとしていたとして、離婚を決意した妻が少なくなかったという。それゆえ震災後には「震災離婚」というキーワードも広まっていたのである。
果たして「あまちゃん」でも震災離婚は描かれるのか。もしくは震災を機に別れてしまうカップルもいるのか。ひろ美と太巻の結婚に、不安を感じる視聴者もいたことだろう。