率直にいい試合だった―最終的に2万人以上が詰めかけた国立競技場の観客から口々にそんな声が洩れた。一方で、試合後、ファンからはある“心配”の声が上がってしまったとか…。
2月28日に国立競技場で行われた、女子サッカーのパリ五輪アジア最終予選第2戦。なでしこジャパンが猛攻を仕掛ける北朝鮮代表を2-1で振り切り、2大会連続6度目の五輪出場を決めたが、フェアに懸命に戦う両チームの試合内容に感動した観客からは、惜しくも敗れた北朝鮮代表へのコメントが目立って投稿されたという。
「スコアレスドローに終わったサウジアラビアでの第1戦は北朝鮮のラフプレーを見逃す主審の裁きに批判が集まりましたが、28日の第2戦はオーストラリアの主審が非常にフェアに裁いたことで、ラフプレーなしでも拮抗したプレーのできる北朝鮮代表に驚かされたファンも多かったようです。今回の試合でもVARがあれば直後の北朝鮮側の抗議もなく、もっとスッキリしたはずのGK山下杏也加の超ファインセーブもあり、なでしこは辛くも逃げ切りました。そのフェアな戦いに観客から惜しみない拍手が送られていました」(スポーツライター)
何よりファンの心を動かしたのが、試合後の北朝鮮代表のリ・ユイル監督の会見だという。
「山下のセーブに関しては不満もあったようですし、韓国メディアの質問が『神経を逆撫でするものだった』として返答拒否するなどザワつく場面もありましたが、『ともに全力を尽くした。素晴らしい内容だった』と戦った両チームを素直に称えたリ監督は、3000人以上集まった同胞の応援団に向け『日本全国から私どもに声援を送ってくださった同胞のサポーターのみなさまにいい結果をもたらすことができず、大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。これからさらにプレーを、いい試合をお見せできるように努力をしてまいりたい』と感謝。そして言葉を詰まらせて涙を流したんです。北朝鮮代表は背負っているものが独特ですから、この光景に日本のサポーターにはもらい泣きする人もいたようですね。そして本国に帰って罰せられるのではないか、強制労働でもさせられるのでないかという憶測まじりの心配の声が多数上がってました」(前出・スポーツライター)
日本のサポーターたちからは、ネット上に「スポーツだけでも手を取り合えるようにならないか」「また日本に来てほしい」と、スポーツと政治は別と改めて感じた人も続々と現れたという。
「実際、北朝鮮も近年は惜しくも敗れた代表を罰するようなことはしていないのではないでしょうか。実際、リ監督は前大会で敗れたあとも代表の指揮を執っています。ただ、会見で流した涙は背水の陣だったこともうかがわせるもので、この後で指揮を執り続けるかは他国と同様未知数ではあるでしょう。いずれにせよ、清々しくフェアな監督という印象を日本のサポーターは持ったようですね」(前出・スポーツライター)
両国が切磋琢磨してアジアの女子サッカーがさらに盛り上がることを期待したい。
(飯野さつき)