6月15日に開幕を控えながら、国内での放映権が未定のままだったサッカー欧州選手権「UEFA EURO2024(EURO)」を巡り、8日から10日にかけて、新たな動きがあった。
ヨーロッパ最強のナショナルチームを決めるEUROは、24カ国のサッカー先進国のみで行われ“W杯よりもレベルは上”との声もあるほど、サッカーファンの間で根強い支持がある大会だ。しかし、その市場価値が年々高まっている影響により、国内での放送は8日まで未定の状態だったが、このほど大手有料放送「WOWOW」が全51試合のライブ配信を発表。加えて、サッカーファン向けに特化した「EURO2024」「UEFAチャンピオンズリーグ」「UEFAヨーロッパリーグ」をセットにしたシーズンパスを期間限定の特別価格(1万4500円)で発売することも併せて発表していた。このシーズンパスを購入することで、通常のWOWOW月額料金(税込2530円)を、約1200円(月額換算)と半額以下にまで抑えることができ、“WOWOWの映画やドラマには興味がないが、サッカーは観たい”という層にはありがたいセットになっていた。
これにて“EURO問題”が一件落着かと思われた6月10日、今度はABEMAが「EURO2024」の全51試合を無料生中継することを発表。同局では2022年のFIFA・W杯カタール大会でも日本史上初の全試合無料生中継を敢行しており、解説デビューした元日本代表MF本田圭佑氏の斬新なスタイルが注目されるなど、大きな話題を提供していた。
「今回のEUROでもABEMAは速報ダイジェスト映像やフルマッチの見逃し配信も無料提供する“太っ腹”ぶりで、サッカーファンの間では、有料放送を2日前に発表していたWOWOWとの比較論が巻き起こっています。WOWOWでは1996年のイングランド大会より、国内でのEURO大会の放送を担ってきた歴史があり、“EUROといえばWOWOW”とのイメージを確立してきました。しかし、近年ではサブスク配信サービスの戦国時代に突入しており、会員数の伸び悩みに直面。このビッグコンテンツを無料配信するほどの余裕はないのでしょうが、8日から10日までの間にEUROを目的にシーズンパスを購入したファンからは『ABEMAさんが無料でやるなら、買わなかったのに…』とする叫びも聞こえています」(スポーツライター)
ちなみに、この太っ腹なABEMAの潤沢な経営資金に最大の貢献を果たしたのは、21年にサイバーエージェント傘下でリリースした「ウマ娘 プリティーダービー」のスマホアプリだとされ、この特大ヒットで、同社は初めて年間営業利益1000億円を突破。ABEMAでのEURO無料放送が決まると「ウマ娘勢の皆さん、本当にありがとう。あなたたちのおかげでEUROがタダで観れます!」と感謝する声まで上がっている。
日本初の有料チャンネルとして長くトップを走ってきたWOWOWだが、新興勢力の配信サービスが大きな盛り上がりを見せており、今後も厳しい競争を強いられることになりそうだ。
(木村慎吾)