質問です。
「人間は何人の顔を覚えられるのでしょうか?」
あなたは何人の顔を覚えていますか?「認知心理学」によれば、ヒトの脳は、1000人の人の顔を記憶できるとのことです。ホテルのドアマンは3000人以上だといいます。
それでは次の質問です。「みなさんは同じ種類のペンギン30羽の“微妙に違う顔”をすべて覚え、区別できますか?」
これは無理ですよね。ところが実は、ペンギンの飼育員の方はできます。人類は、他の動物と異なり30種類もある(他の動物にはほとんどない)表情筋を使って、ごくごく微妙な感情を“顔で表現”できます。
そしてその微妙に違う顔の“表情を読み取る”ことができるのです。
どちらも人類だけが持っているすごい“顔パワー”なのですが、実は、この“顔を読む能力”、「女性のほうが優れている」ことが明らかになっています。
人類誕生以来の長い歴史の中で、女性は、育児や家事を担当することが多く、そのぶんだけ家族の“顔の微妙な変化”を読み取る機会があり、必要もありました。人類は、700万年前に誕生して以来、680万年という長い間、“言葉”を持っていませんでした。その間、母親などの女性は家族の状態を“顔”を見ることで理解し続けていたのです。
もちろん男性も育児や家事をしたのでしょうが、時間的、量的には女性が勝ります。結果、「“顔”を読めない男性」が誕生しました。「はっきり言葉で言ってくれよ」 という男性の発言にはこんな背景があります。
家族だけではありません。女性は、人のあらゆる感情を“顔から読み取る”ことができます。女性は「人の気持ちがよくわかる」から、「人に優しい」のではないでしょうか。
“人の顔”は、「喜怒哀楽」や「恐怖」「不安」「戸惑い」などに対応して、独特の表情を示すのですが、男性は、周囲の状況で“顔を読む”しかないのです。ところが女性は“顔の写真”を見るだけでやすやすと判断してしまいます。
今回、タイトルの下に掲載した写真は、ペンシルベニア大学の研究で使われた「表情読み取りテスト」の写真(「NHKスペシャル」より)です。この顔は、「喜び、悲しみ、怒り、怖れ」 の4つの感情のうちどれを表しているのでしょうか?
ちなみに、“表情は世界共通”(人種による違いはない)ということがわかっています(心理学者のポール・エクマンの研究など)。
私には、「悲しみ」に見えました。友人の男性の中には「喜び」と答えた人もいました。
写真の正解は「怖れ」 です。
女性では、ほとんどの人が正解。7歳の女の子(私の孫)も正解。「なぜ?」 と聞くと、「喜びも、悲しみも、怒りも、みんな違うから」と答えてくれました。
あるパーティーの会場で、私の妻が、楽しそうに会話している男女を見て、こう言いました。
「あの男の人、上司なんだろうけど、彼女があんなに“イヤそうな顔”してるの、気がつかないのかしら…」
ビックリです。私には、その彼女は、とてもうれしそうに笑顔で対話しているようにしか見えないのです。
女性は、「気遣いで話している」とか、「本当は迷惑なのだ」とか、“顔”一つで、その人の心の深いところまで見ることができるのです。だから、「男は女にウソがつけない」のです。そう言えば、「♪折れたタバコの吸い殻で、あなたのウソがわかるのよ」なんて歌もありました。
次回は、「“場を読む”のも、女性がスゴイ」です。あわせて「男のスゴイところ」もご紹介します。
●プロフィール
なかむら・かつひろ 1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。現在は広島経済大学名誉教授。著書 に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(広島経済大学研究双書)などがある。講演テーマに「“顔”とアナウンサー」「“失敗の歴史”からの人生訓」「ウィンウィン“説得術”」など多数。