前回、「男の“恋のはじまり”は“くびれ”、まずはそこから始まって、顔や性格やことばや動作などを見て恋の相手を選んでいた」ということをお伝えしましたが、それでは、女性の場合はどうでしょうか。
女の恋の相手の最初の選び方は、男とは明らかに違います。女が最優先するのも、「自分の子孫をできるだけ多く、確実に残したい」という本能的な欲望、「生き残りの戦略」であることに変わりはないのですが、女性の場合は、「出産・子育て」という大変な試練があります。
かつて、直立歩行するようになり、脳が巨大に発達した人間にとって、「出産は難産となり、子育てには多くの時間がかかった」のです(今もそうですが)。 女一人ではとても大変でした(今もそうですが)。
だから、女性にとって、頼れる(子育ての)パートナーを見つけることは、母と子の命をかけた一大事だったのです。
子育ての場合、相手がいいパートナーになるかどうかは“顔”を見るだけでは判断できません。イケメンであれば、ベストパートナーだとは言い切れません。
男を前にして、女の脳で、活発に働いているのは、「帯状回(たいじょうかい)」という部分です。ここは、ヒトの記憶と深いかかわりを持っています。女性は記憶をたどり、相手のこれまでの言動から、男の資質を判断するようになったのです。女性は、記憶を思い起こします。
「あの時、彼は、やさしくしてくれた。力強かった。理解してくれた。協力してくれた。守ってくれた」 などなど… 男の魅力を、女は記憶を頼りに判断するのです。
わたしは、結婚式の司会をたくさん(娘の結婚式の司会まで)してきましたが、新婦に「なぜこの人?」と聞くと、ほぼすべての女性が「やさしさ」をあげます。この場合の「やさしさ」とは、「守る、理解する、明るい、積極的など」 すべての「子育てに欠くことのできない前向きな資質」が含まれています。
逆に「イケメンだから」という答えは皆無。「彼はイケメンだ」という判断基準は、「生き残り」には役に立ちません。昔から、「色男、金と力は、なかりけり」と言われていますよね。もちろん例外はあるのですが…。
このことから逆に、「もてる男の条件」が見えてきます。男性諸君が女性にもてるためには、「やさしさ」だけでなく、誠実さ、力強さ、生活力など「子育てにおける頼りがい」をアピールすべきなのです。
男は“くびれ”、女は“メモリー”。「恋の始まりに顔は、あまり関係なし」 「顔は後からついてくる」 のですが、とはいえ、「美人・イケメンであるに越したことはない」と思っている方も多いハズ。でも、「世の中のすべての人が美人、イケメンである」とは限りませんよね。では、どうすればいいのでしょうか。
実は、美人、イケメンの魅力を上回る“顔”がこの世には存在します。
その顔とは“晴顔”。 「恋は必ず晴顔でいく」のです。晴顔には、美しさ、やさしさ、力強さ、元気などの「生き残りの戦略」情報があふれています。だから男女を問わず、晴顔(特に笑顔)は、恋愛においてもオールマイティーです。ハッキリ言ってしまえば、晴顔は、美人・イケメンに勝ります。
晴顔は相手の恋愛感情に強烈にアピールします。若いころの私なんぞは、女性の笑顔にイチコロでした。
次回は、「“顔”と“恋”」 ③ 男と女の恋の真っ最中「相手が美女・イケメンにみえる!!」 恋の仕組みを見ていきます。
(画像は「NHKスペシャル」より)
●プロフィール
なかむら・かつひろ 1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演テーマに「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」。