コロナの状況が落ち着いてきたこともあり、昨年は旅先で飲んだお酒あれこれが特に印象に残っています。
夏に家族旅行で行った江の島。娘がまだ小さく、気ままにあちこち飲み歩くというわけにはいかないのですが、偶然にふらりと入れた「マイアミ貝新」が素晴らしかった。朝から出発して「新江ノ島水族館」をじっくりと堪能。だいぶ疲れたところで、その近くにあったというだけの理由で入った小さな定食屋さんなんですが、あとから知ったところによると、すんなり入れたのが幸運なくらいの人気店らしいですね。
その日に漁がなければ提供のない「生しらす丼」をはじめ、「マグロブツ定食」や「いか焼」などを注文し、お供は当然キンキンの生ビール。これらがまったく観光地価格ではないにもかかわらず、どれも絶品で…。
また、数年ぶりに京都・大阪へ遠征できたのも最高に楽しかった。
イベント出演や雑誌取材の仕事を絡め、3泊4日で飲み歩いた店は、京都松尾大社「団ぷ鈴」、嵐山「琴ヶ瀬茶屋」、西大路御池「高木与三右衛門商店」、大宮「赤まる」、大阪京橋「赤のれん」「得一」「ラテラル」、天満「八銭」「但馬屋」、京橋「まつい」、鶴橋「カナアン2号店」、森ノ宮「酒の穴」「マルケン餃子食堂」、鶴橋「よあけ食堂」「ちほ」「うむ」の計16軒。自分でも、いくらなんでも飲み過ぎだろうとは思いつつ、どの店も甲乙つけがたいくらいに大好きで、本当に関西で酒を飲む楽しみが身に沁みる体験となりました。
ちなみに24年は、大阪にはもう一度、娘の長年の希望でもあった「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」へ行くための家族旅行も。これは先の飲み歩き旅行とはまったく違い、常に家族優先。しかしながら、隙を見ては個人的に酒を飲むことはやぶさかでないというスタンスで臨み、それはそれで楽しい旅となりました。特に、帰りの新幹線を待つ空き時間の新大阪駅で偶然立ち寄った「松葉総本店 エキマルシェ新大阪店」。ここ、創業70年以上の老舗串かつ店の支店なのですが、商業ビルに入っているとは思えないほどにいい立ち飲み屋で、これまた大阪の懐の深さを思い知ったのでした。
そしてしばらく前に行き、今現在も圧倒的なる“ロス中”なのが、2泊3日で訪れた北秋田。縁あって珍しくツアー旅行に参加させてもらったのですが、そのテーマが「縄文文化」と「マタギ文化」。近年ちょうど興味を持っていたそれらに関するアカデミックなスポットめぐりが楽しく、ちょっと人生観が変わってしまうくらいの体験をしてきたのでした。
もちろん、お酒や食べ物に関しても大充実。特に2日目に宿泊した、“阿仁マタギ”の聖地にある「秘境の宿 打当温泉 マタギの湯」。そこで食べた、実際にマタギの方が狩猟した熊肉を使った「熊鍋」と、宿特製のどぶろくの相性がたまらなく─。
と、旅に出るたびにその土地に対する“ロス”になり、なんだかそんな時間ばかりを過ごしていたような気がする昨年。振り返ってみると、それはとても幸せなことなのかもしれないなぁと思ったり。今年もいろいろな場所に出かけ、おいしいお酒を飲めたらいいなぁ。
あ、テーマは「昨年のベスト酒シーン」でしたね。う~ん、いろいろあるけど、子供のためにと訪れたUSJが意外にも楽しすぎ、夜中に宿を抜けて、USJの正門の前で、名残惜しさをつまみに1人で飲んだ缶チューハイ、かな。
さて次回のテーマ。ナオさんにも「昨年のベスト酒シーン」を聞いてみたいのですが、いかがでしたでしょうか。
パリッコ:酒場ライター。著書に「酒場っ子」「天国酒場」など多数。スズキナオ氏との酒飲みユニット「酒の穴」としても活動している。「缶チューハイとベビーカー」が絶賛発売中!