「昨年のベスト酒シーン」を思い返すにあたり、スマホの写真ライブラリを1月から見返していたのですが、「毎年、だいたい同じことをしているなー!」と思いました。
私は大阪に住んでいるのですが、神戸の高取山という、私のような運動不足の者でもなんとか登れる低い山があるんです。その高取山に、今はもう廃業してしまっているけど、毎年正月だけ営業するという山茶屋があるんですね。年明けは去年も一昨年もそこに飲みに行っていました。
また、1月9日から11日までは恵比寿様を祀る「えべっさん」というお祭りが関西のあちこちで開かれるのですが、それが東京でいう酉の市のような華やかさで、屋台がたくさん出て、そこにも毎年、お酒を飲みに行っている。と、そんな風に始まって、夏は甲子園に高校野球を観に行って、いつもめちゃくちゃ暑いのですが、その分、冷えた生ビールがおいしくて、とか、もうその繰り返しなんですよね。
まあこんな不安定な世の中で、そんな風に恒例行事を楽しみにしていられるだけでありがたいことだとは思うのですが、成長がない自分です。そして今年もきっと成長なく、その時々のことを楽しんで生きていくのだと思います。
あ、今また写真ライブラリを見返していて思ったのですが、関西では冬場の居酒屋にかなりの高確率で「粕汁」があるんです。東京に住んでいた頃、私はあまり粕汁を食べてこなかったのですが(むしろちょっと苦手でした)、大阪に移り住んでからというもの、こっちの酒好きの方々がみんな寒い季節の粕汁を楽しみにしていることを知り、マネして食べているうちに大好きになりました。店ごとに粕の濃さも具のバリエーションなんかもかなり違うので、食べ比べが楽しいんです。粕汁が旨い店はまず名店だと思って間違いなし。パリッコさんにもこっちの粕汁を食べてほしいです!
いけない、昨年のベスト酒シーンの話でしたね。昨年の夏、深夜ラジオのパーソナリティを務めさせてもらうという謎の機会がありました。居酒屋を紹介するコーナーでたまに呼んでもらっているMBSという大阪のテレビ・ラジオ局があって、そこのスタッフの方から声をかけてもらった企画でした。
なんでも最近、同局では深夜の時間帯をかなり少人数のスタッフで回しているそうで、ナレーションもAIを使ってやったりしているのだとか。で、そういう時間帯なので、比較的自由にゆるい企画を立ててもいいそうで、私のことを知ってくれていたスタッフの方が、チャレンジ的に特番を組んでくれたのでした。
午前2時から午前5時近くまでたった1人で生放送をするという番組で、私は今までにそんな仕事をしたことがなく、「本当に大丈夫か?」と誰より自分が思うほどでした。
めちゃくちゃ緊張したのですが、結果的にはなんとかなって、好きな曲をかけて、独り言をぼそぼそ喋っていたらあっという間に時間が過ぎていきました。
それはいい経験だったのですが、辛かったのが、生放送を1人でやるということで、一応、お酒がNGになっていたんです。いや、NGだとはっきり言われたわけではないのですが、放送中に泥酔してはいけないし、まあそこは常識的に…ね、という雰囲気でした。
飲みながらやれたらもっとリラックスできたのではないかと思うのですが、とにかくお酒を我慢して頑張って、午前5時近くに放送が終わったタイミングで、スタッフの方が用意していた缶ビールをご褒美に出してくれたんです。グッと飲んだその缶ビールは、去年1年で一番おいしいものだったかもしれません。
次回のテーマ、「缶ビールと瓶ビールと生ビール、どれが好き?」でどうでしょう!
スズキナオ:東京生まれ、大阪在住のフリーライター。著書に「深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと」「家から5分の旅館に泊まる」他。「大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる」が2月下旬に発売予定。