“口”で「イイこと」を言えば、“イイ顔”になり、健康になります。泣きながらジョークは言えません。
■「言霊(コトダマ)」は生きている
日本には古くから「コトダマ」という考え方があります。「口に出して言ったことは実現する」という考え方です。これは「怨霊思想」とも結びつき、今も私たちに影響を与えています。
みなさんは、「縁起でもないことを言うんじゃない」と言われたことはありませんか?「死ぬ」とか「苦しむ」とか「別れる」とかという縁起の悪い言葉(忌み言葉)を口に出して言うと、そのことが実現するから言ってはいけない、というわけですね。
■コトダマは、「発音」が同じであれば発生する
たとえば「4(よん)」という数詞は「シ」とも発音しますが、その「シ」という音は、「死」「師」「詩」「子」「私」などたくさんの同音異義語に置き換えられます。コトダマの世界では、そのすべてが、「死」という縁起の悪い言葉になるのです。だから、「詩人」は「死人」に、「恩師」は「怨死」などの“縁起の悪い言葉”になってしまいます。車のナンバーで「4242」や「4989」などは「死に死に」や「四苦八苦」に通じるため、いやがられます。
■“縁起のいいコトダマ”も、実現する
神社の結婚式では、祝詞(のりと)といって、“めでたい言葉”を精一杯並べ立て、コトダマによって、その言葉が実現することを期待します。
一方、キリスト教の結婚式では「汝は、この男性 (女性)をよきにつけ悪しきにつけ、病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで、聖なる結婚により夫(妻)とするや」という誓いの言葉が述べられます。ここには「悪しき」「病」「死」「分かつ」などの忌み言葉が平気で使われています。
しかし、最近、日本の教会でも、「死が二人を分かつ」の部分を「命のある限り」と言っている場合が多くなり、キリスト教の結婚式にまで日本のコトダマ思想が染み込んできました。
■コトダマは“迷信”であると断言できない、三つの理由
【理由①】ヒトは“言葉”で考え、創造する
「ヒトは“言葉”のイメージを、現実に作り出せる」 のです。これが、「“言葉”は実現できる」から、「“言葉”は実現する」という、「コトダマの信仰につながった」と私は考えています。
【理由②】ヒトは全身全霊で“言葉”をしぼり出す
「口で発声するために、人の脳は、全体が猛烈に頑張っているのだ」ということが、最近の研究でわかってきました。「リンゴ」と言うために、頭の中は、リンゴに関するあらゆる情報が充満して、“脳は全力回転状態”となり、発声器官は音声を準備し、顔は“リンゴ顔”(変な言い方ですが)となってくるのです。
このようにして、全身全霊のパワーを込めて発せられた“言葉”は、自分や相手の心に、コトダマとして、大きな影響を及ぼします。
【理由③】“コトダマ顔”がヒトを支配する
良くも悪くも、“コトダマ効果”を期待して言葉を発する時、人は“それなりの顔”をするものです。「呪い」の言葉を発する時、逆に「祝詞」を言う時、ヒトは、恐ろしいほど忠実にその心理を“顔に反映”するのです。これを“コトダマ顔”と名づけましょう。
“コトダマ顔”は、相手にも自分自身にも、強烈なインパクトをもたらします。この「“コトダマ顔”の強い顔パワーが、自分や相手の心を支配して、コトダマ効果を決定的なものにしている」のだと、私は思います。
以上3つの理由で、コトダマ効果は実在するということになります。ただし、飛行機を落としたり、人を殺したりはできません。でも、うまーく利用して、幸せに、元気になることはできます。
次回は、コトダマパワーで、実際に“幸運”を呼び込んでみましょう。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」