Q:ママ友の間でも話題になるのですが、“叱る”のと“怒る”の違いがわかりません。子供が悪いこと、危ないことをしたときに、自分が子供を叱っているのか?怒っているのか? 叱るのは必要なことで、怒るのはダメなのか? 子供をどうやって躾(しつけ)るのが正しいのか教えてください。
A:確かに、数々出版されている育児書の中でも、必ず書かれている“叱る”と“怒る”の違い。前者は理論的、後者は感情的と解説されていることが多いように感じます。
ですが、感情のない叱りは、ありえません。むしろ、感情なく叱っていたとしたら、それは精神科医として怖いことだとさえ思います。これまでも何度も説明していますが、子供は相手の表情からもその場の雰囲気やその人の感情を読み取っています。
たとえば、笑顔で子供に暴力をふるったとします。その子は身体的痛みを感じながら“これは人とのコミュニケーションなんだ”と間違った解釈をしてインプットしてしまいます。笑顔=いいこと、楽しいことで、それと暴力を結び付けてしまうようになり、他者に対して同様の行動に出ることがあるんです。
怒っているときはその感情を表に出して、叱らなければいけません。そうでないと、子供は言葉と表情のギャップに混乱をきたし、曲解してしまうことが多いからです。
また、愛しているからこそ、きちんと躾たいからこそ手を上げた、という親御さんがいます。けれども、“愛しているから暴力行為に及ぶ”ということは間違っています。そして、いままさに燃える炎に手を出そうとした子供の手をバシッと叩いて払うのは、危険を回避するための手段であり、この行為を暴力とはいいません。
子供を教え諭したいときは、言い聞かせる前にまず、きちんと正座をさせてください。それで、いつもとは違う雰囲気であることをわからせてから、何がいけなかったのかを話せばいいのです。じっとしていることさえ苦痛な子供にとって、正座は辛いお仕置きかもしれません。ですが、こうすることで親の言葉にきちんと耳を集中させることができますし、自分はいま、これから叱られる状況にあるのだということも容易にわからせることができます。
叱る前にこのような前段階があることで、次回からは「正座をしなさい」と言っただけで“自分はこれから叱られるのだ”とわかるようになります。さらに、叱る側も冷静になることができるのです。
(監修・ストレスケア日比谷クリニック 酒井和夫院長/取材・文 李京榮)