「24時間テレビ」で司会の大役を務めた日本テレビの水卜麻美アナ。「好きな女子アナ」4期連続1位に輝き、もはや日本中に彼女のことを知らない人がいないほどの人気ぶりだが、2010年に彼女がテレビに出だした頃に「水ト」という名字を正確に読めた人がどれだけいるだろうか。それもそのはず、水トの名字は全国でもかなりレアで、十数人しかいない。香川、千葉の一部にごく少数見られる程度で、その先祖は室町時代に水を使って卜(うらない)をしていたと言われる。
また、夏の甲子園を制した花咲徳栄高校。埼玉県勢としての全国制覇は100年の歴史ある夏の高校野球で初めてということとともに、校名を「はなさきとくはる」と読ませることを初めて知った人も多いだろう。
ちなみに校名の由来は、校舎の立つ埼玉県加須市花崎から「花咲」。生徒ひとりひとりが「徳」を積み、花を咲かせるという意味に、運営する佐藤栄学園から一字取り(同系列に『埼玉栄高等学校』『栄東高等学校』『栄北高等学校』がある)「花咲徳栄」となったようだが、栄を「はる」と読ませるのは辞典によれば、“名のり”として認められた当て字のようなもの。
栄=[音]エイ ヨウ(ヤウ)/[訓]さかえる はえ はえる
この名のり読みがあるため、日本には難読名字が山ほどある。これを機会に学習してみよう。
九(いちじく/9が漢字一字で表されている)
十(もげき/木という字の払いがもげている)
小鳥遊(たかなし/小鳥が安心して遊べるところに鷹はいない)
月見里(やまなし/山がないと月がよく見える)
鴨脚(いちょう/イチョウの葉は鴨の脚に似ている)
八月一日(ほづみ/8月1日に稲穂を積んで神様に備える行事が由来)
七部(たなべ/七夕と同じ読み)
部田(とりた/服部と同じ読み)
今では「名字」も「姓」も同じ意味として捉えられているが、もともとは別物。「姓」は「源」「平」「藤原」「橘」など天皇から与えられたもので、「名字」は一族の見分けをつけるためのもの。たとえば、姓が藤原の人がたくさんいてややこしいので「遠江の組の藤原さんは、遠藤と呼ぼう」というように便宜をはかって付けられたのが名字というワケ。
また徳川家康が武田信玄に破れ、浜松城へ逃げ帰る際に立ち寄った一軒の家で振る舞われた“おかゆ”のお礼としてつけられた小粥(おかい・おがい)や、源義経に風呂を提供した家につけたという「風呂」(ふろ)さんもいる。庶民も「オレの店、越後屋だから越後を名乗ろう」と商売の屋号や住んでいた地形、地名などを名字の由来にしていた。これが明治に入って作られた戸籍法によって、姓、名字のいずれかを選んで登録することが義務付けられたことにより、一元化されたのだ。