フィギュアスケート「オータムクラシック2017」のSPで世界歴代最高得点を更新した羽生結弦選手。FSでも最高の演技をして、総合点でも世界歴代最高得点を更新するのではと期待されたが、残念ながらその大記録はお預けとなった。
だが、これは決して落胆すべきことではないという。
「まだGPシリーズという本格大会が始まる前の足馴らしの状況です。しかも、羽生選手は指導するオーサーコーチの“安定した技を磨き上げ、確実に得点して勝つ”という考えとは違い、新しい4回転などを投入し、攻めて勝つことを望んでいました。もちろんチャレンジはいいことですが、五輪イヤーということを考えると、リスクのある演技で高得点を取るより、手堅く安定した滑りで高得点を取ることのほうが、より確実に金メダルを狙えると考えて間違いありません。羽生選手のチャレンジが“考えすぎて”失敗したのは、安定した確実な技で挑む重要性をもう一度考え直すいいきっかけになったのではないでしょうか」(スポーツライター)
それだけではなく、今回の結果を前向きに捉えられる、もっと大きな理由もあるという。
「先日、羽生選手が世界歴代最高得点を取ったGPファイナル直前の自分について語っていましたが、初めて“恐怖”を感じたのだとか。完璧な演技をした自分に勝たなくてはいけない、期待に応えなくてはいけないという恐れの気持ちがあったというのです。もちろん、今回は4回転ループを回避したので完璧なものではなかったですが、それでもシーズン初戦のこの大会で総合点でも世界歴代最高得点を更新していたら、これからの大会のすべてで見えない自分と戦わなければならず、過酷なシーズンになったと思いますよ」(前出・スポーツライター)
応援する立場からすると「もっともっと!」と高得点の期待がエスカレートしてしまうが、平昌五輪を控えたこのシーズンだからこそ、再度の偉業のために、慎重かつ戦略的に、五輪にピークを合わせたアプローチで活躍してもらうことを第一に応援していきたいものだ。
(芝公子)