大杉漣さんが語っていた北野武監督との忘れられないワンシーン

 2月24日に放送された「新・情報7days ニュースキャスター」(TBS系)で、ビートたけしが21日に他界した俳優の大杉漣さんについてコメントした。

 番組では、たけしが作詞・作曲した楽曲「浅草キッド」を大杉さんがギターで伴奏し、たけしが歌う映像が流された。VTR明けに安住紳一郎アナから「寂しいですね」と問われたたけしは「うん、あぁ…」と言葉を詰まらせた。

 大杉さんの役者生活は北野武監督抜きでは語れない。

 22歳で舞台デビューし、その後ピンク映画やVシネに出演するものの下積み時代の長かった大杉さん。転機となったのは、1993年に公開された北野武監督の「ソナチネ」だった。以後、「キッズ・リターン」「HANA-BI」「アウトレイジ 最終章」など、北野作品に欠かせない俳優となった。

 映画だけで380本を超える作品に出演した大杉さんだが、中でも一生、忘れることのできない強烈な思い出がある役は「キッズ・リターン」だった。

 この映画で大杉さんは、1シーンだけの出演。役名はなくて“タクシーの客”。それしか知らされずに「直接現場に来てくれ」とだけ告げられて、代々木公園の近くの参宮橋に行った。

「参宮橋へ行ったら、たけしさんがいて『大杉さんね、多分この男、リストラされたんじゃないかな。その送別会の帰り? それでタクシーに乗るんだ。ぐるっと回って帰ってきて』って。そうですかってフッと見たら、たけしさんはもう向こうのほうでスタッフとキャッチボールしてる。セリフどころか、ただ設定だけを言っただけ」

 このときの大杉さんは「どう演じればいいんだ? ものすごく孤独で。追い込まれた気分だった」そうだ。それでもリストラされたサラリーマンの何気ない世間話を適当に話したら、一発OK。一気に、気抜けしたという。

 訃報を知らされた時、たけしは「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)の収録中だった。当日のことを「マネージャーが大杉漣さんが亡くなられましたと言うのよ。お亡くなりになったのはわかるのよ、でも誰それって。俺、大杉漣さんをこれほど知っているのに真っ白になってわからないのよ。頭がパニクッちゃって…」と語り、目を潤ませた。

 北野映画を支えた同志の早すぎる死に、ショックを隠せなかった。

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