自分はもちろん、生き物や他人をも大切にできる人に育って欲しい。でも、命の大切さってどうやって教えればいいの? 言葉で伝えて分かるのかしら……。子どもの教育現場にいると、保護者からこのような相談をいただくことがあります。子どもたちは絵本や親からの言葉よりも、実際に次のような体験をすることで、命と触れ合い感じ取ることができ、自ら命について考えるようになります。
■生き物を育てたとき
「ペットを飼う」「外で捕まえた虫を飼う」などは、手軽に命と触れることができるとてもいい機会です。命の短い生き物を扱えば、自ずと“死”と向き合うことになります。元気に生きることができるように飼い方を調べたり、餌やりや掃除を怠らないようにすることは、命を大切にする経験としてとても重要なことですね。
また、死と向かい合うときはあっさりと片付けるのではなく、供養するところまで行うことで、子ども自身が命の大切さを感じ取る機会になります。それには、まず周りの大人自身が大切にしたいと思い、最後までていねいに向き合う姿を見せることが大切です。一緒に取り組む子どもにも、それは必ず伝わりますよ。
■ショッキングな体験をしたとき
大切なペットや身近な人の死を体験したときは、かなりショッキングなことではありますが、子どもの心が大きく揺れ動かされます。このとき、「あまり深刻に考えないように…」と話さないのではなく、命は次の世代にバトンタッチされていくものであるということ、自分の命はさまざまな人の協力で支えられていることなど、子どもとじっくり話し合う機会を作ってあげるのもいいでしょう。
親御さんたちが前向きに過ごして子どもを安心させてあげると、“自分を大切にするという視点”を子どもに渡すチャンスとなります。ショックが大きい場合は、時間をおいて落ち着いてから話すなどの工夫も必要です。
■愛されていると実感したとき
普段、自分がどれだけ愛されているかを実感することも、相手を大切にする心を育てる重要な要素です。自分を大切にできないと、相手を大切にすることはできません。自分という命をこんなにも大切にして守ってくれる存在がいるのだということを、日々子どもに感じさせてあげましょう。そういう意味で、幼少期の大人たちからの愛情は、その後の心の発達に大きく影響するといえます。
子どもには理屈を伝えるよりも、日々の生活でしっかり感じ取ることができるようにしてあげたいものです。そして、我々大人自身が命を大切にし、大きな背中を見せてあげられるように意識することが、子どもの感性を育んで命の大切さを実感できるようにする近道です。その子自身を大切にし、一緒に命を大切に扱うことで、子どもの心を豊かにしていきましょう。
(Nao Kiyota)