10月スタートのテレビ東京系列連続ドラマ「死役所」で、TOKIOの松岡昌宏が主役を務める。演じるのは死んだ人が最初にたどり着く“あの世の市役所”に務める職員・シ村。松岡にとって同作は、テレ東ドラマ初主演。これによって松岡は、民放全局の連ドラの主演を制覇することになる。
そもそも“俳優”松岡は、ドラマ界の高記録保持者だ。かつてはジャニーズ枠で知られた日テレの土曜ドラマ枠(当時は午後9時で、現在は10時からの1時間枠)で、主演最多記録を持っていたのだ。今は、ジャニーズ事務所の後輩でKAT-TUN・亀梨和也とタイの7番組。今後、先輩・後輩でデッドヒートが繰り広げられるかもしれない。
バンド活動のかたわら、俳優としての実績も着々と重ねてきた松岡。その礎を築いたのは、20代から30代にかけて経験した京都・太秦の撮影現場と、そこで出会った昭和の名優たちだ。映画誌の記者が当時をこう振り返る。
「今はもうなくなった撮影所の食堂スタッフから『殿』と呼ばれるほど、松岡は足しげく通っていたそうです。食堂は『寺にぃ』こと寺島進、北大路欣也、亡くなった渡瀬恒彦、夏八木勲、川谷拓三ほか大物俳優との親睦を深めた場。特にお世話になったのは、故・松方弘樹さん。『松にぃ』が松岡さんの演技の源といっても過言ではないでしょう」
時代劇デビューは、94年の「大忠臣蔵」(TBS系)。弱冠16歳で、松方の弟役の大石主税を演じた。以降は公私ともに親しかったが、17年1月21日に松方は、脳リンパ腫のため死去。松岡が訃報を知ったのは、同じく松方の後ろ姿を見て育った先輩・東山紀之と松竹京都撮影所にいたときだ。松方が長らく楽屋として使っていた部屋で、2人で手を合わせたという。
その3日後、運命の歯車が動きだす。
「『名奉行!遠山の金四郎』(TBS系)の主役が決定したのです。23年ぶりによみがえった遠山金四郎。テレビ朝日での時代劇シリーズ『名奉行 遠山の金さん』で主演を務めていたのは、松方。その金さんという大役のオファーに松岡は、『次の金さんはお前だ!』と任されたような気がした、とのちに振り返っています」(前出・映画誌記者)
松岡と松方さんの妙縁には続きがある。
今年7月、恩師のジャニー喜多川元社長が逝去した。松岡がまだ12、3歳で都内・原宿にあった合宿所に住んでいたとき、冷蔵庫にあった牛肉を勝手に焼いて食べてしまった。後日やって来たジャニー氏はそれを知って、「ふざけんじゃねー!バカ野郎!」と怒り心頭。その肉は、100g8000円の超高級品。松方からの贈り物だった。
松岡のなかで生き続ける2人の恩人。天国から、地上波制覇の朗報を喜んでいるに違いない。
(北村ともこ)