日本列島を襲った台風19号で、神奈川県川崎市の武蔵小杉がにわかに注目を集めている。多摩川沿いにタワーマンションが立ち並ぶ光景で知られる同駅周辺では浸水被害が発生。JR武蔵小杉駅では改札が浸水したほか、一部のマンションでは停電やトイレが使えなくなるといった実害に見舞われている状況だ。
「停電でエレベーターが使えないため、高層階の住民は自宅から外出するだけでも一苦労。通勤通学にも支障をきたすため、家族ごとホテルに避難するケースも出ています。低層階でもトイレが使えず、仮設トイレの使用を余儀なくされることに。三連休明けに通勤通学する子供たちや務め人からは、恨み節も出ている状況です」(神奈川県在住のライター)
この武蔵小杉はかつて、大手メーカーの工場が立ち並ぶ地域だったが、2000年以降には工場移転に伴う再開発により次々とタワーマンションが建設。東京とは多摩川をはさんですぐという地の利に加え、2010年には同地を通過していたJR横須賀線に駅が新設され、新世代のマンション街として人気を集めている。
「今やタワーマンションが10棟以上も林立し、中低層マンションも増加。武蔵小杉を抱える川崎市中原区では2010年との比較で約1万6000世帯・2万7000人も人口が増えました。急激な人口増に対応するため、川崎市では今年4月に小学校を1校新設したほどです。武蔵小杉駅の混雑も激しく、朝の通勤時間帯には駅構内に入るための行列が日常化。タワマン住民は出勤時に長時間のエレベーター待ちに加え、駅でも行列待ちを余儀なくされ、『都心まで20分』という近さがすっかり台無しになっています」(前出・神奈川県在住ライター)
そんな通勤地獄に今回の浸水被害が重なったことにより、一部の世帯では家庭内のいさかいが勃発しているというのである。前出のライターが声を潜める。
「マンション選びでは夫よりも妻の意向が優先される家庭は珍しくありません。なかでも自宅で過ごす時間の長い専業主婦にとっては窓からの眺望は大きな魅力となり、積極的に武蔵小杉のタワマンを選んだという家庭が少なくないのです。購入前は東京都心に近いとして同意していた夫も、いざ住んでみると予想もしていなかった通勤地獄に遭遇。そして今回の浸水被害ですから、《本当は川の近くに住みたくなかった》《お前が良いと言って選んだのだから停電でも文句を言うな!》などと、夫婦間でのいさかいに発展しているとか。そこに両方の親も加わって、被害が復旧するまでどちらの実家に身を寄せるかでも紛糾。今回の浸水被害をきっかけに離婚にまで発展する家庭が続出するのではと懸念される事態になっています」
危機の時こそ家族なら協力し合いたいもの。しかしどの家庭でもそうやって気持ちを一つにできるとは限らないようだ。
(白根麻子)