「深夜まで仕事して、メイクもボロボロになっている職場の女性を見ていると、“女の幸せ”を逃しててカワイソウって思うよね‥‥」
これは、ある大手広告代理店社員の言葉。続けてこう話す。
「どれだけ有名企業に入って頑張っていても、女の子は幸せになれないよ」
その昔は“キャリアウーマン”などともてはやされていたが、いまや働く女性たちの間では、出世に興味がない人がほとんどだという。
公益財団法人日本生産性本部が2014年度の新入社員にアンケートをとったところ、女性の新入社員の72.8%が「管理職になりたくない」と答えたことが発表された(2014年12月22日公表)。
そのうち最も多かった理由が「自分の自由な時間を持ちたい」というもの。そこで実際、30代女性たちに働く上での不満を聞いてみると、こんな意見が上がってきた。
「スタッフの出勤管理や売上管理など、立場が上になっていくにつれ、帰る時間が遅くなっていく。カレシとのすれ違いも増えてきた。だからまた、事務職に転職したいと考えています」(アパレル・31歳)
「仕事の責任が重くなるにつれて、ストレスで肌トラブルが起こったり、笑顔が作れなくなったり。リラックスできる時間がほしい」(商社・35歳)
「できる人ほど仕事が増えるから、年々出会いのチャンスがなくなっていく」(広告デザイン・34歳)
こうした先輩女性たちの声を聞いて、新入社員女子たちも「出世は不幸」という考えに至るのだろうか。
また、管理職になりたくない理由として次に多かったのが「専門性の高い仕事がしたい」というもの。男性で管理職になりたくない人のうち、この理由を挙げたのは14.6%だったのに対し、女性は23.7%と明らかに多い。
専門性の高い仕事、つまり手に職をつければ、出産や育児でブランクができたとしても、再就職はしやすいはずだ。出世よりも手に職、それが今の働く女性の考え方ということだろうか。就職を経て専業主婦になった女性たちに話を聞くと、
「子どもはいないから自分の時間はあるけれど、社会から遮断された気分になってしまう。何か資格をとって、自分のペースで働いてみたいと思う」(34歳)
「子どもが中学生になったら時間を持て余すから、薬剤師の資格を活かしてもう一度再就職するつもり」(40歳)
「今から仕事をしようと思っても、非正規雇用しか道がないと思う。子育て中にも資格をとったり英会話などの勉強をしておくことは重要かも」(42歳)
専業主婦を続けるならともかく、いずれは働きたいと考えている場合には、やはり「専門性の高い仕事」を目指す傾向にあるようだ。
安倍政権では「女性役員・管理職の増加」を目指すというが、働く女性の本当の幸せとは何なのか。出世だけが「女性の活躍」のすべてではないということに、目を向けるべきかもしれない。