アメリカの心理学者R・ソマーの“パーソナルスペース”の研究は、物理的な距離という原因が人間関係に影響を及ぼすことを示しています。
人間における距離は、次の4つに分かれます。一番近いのは「密接距離」と呼ばれる、45cm以内の距離感です。すぐに触れるような距離ですので、かなり親しい2人でしかありえない距離感といえます。
次に近いのが「個体距離」の45~120cm。手を伸ばせば届く距離なので、夫婦や恋人、友だちとならありえる距離です。逆に、それほど好意を持っていない異性がこの距離にいたら、違和感を覚えることでしょう。
次が「社会的距離」の120~360cm。文字通り、とてもオフィシャルな距離感です。全く体が触れ合わない距離であり、仕事相手などとの距離感といえますね。
そして、最後は360cm以上の「公衆距離」。細やかなコミュニケーションは取りにくく、また、細やかなコミュニケーションを取る相手との距離感ではないです。例えば、スーパーであっちの棚を見てる人とこっちの棚を見ている私の距離感。他人との距離ですね。
人は常に、快適なパーソナルスペースを必要としています。そのため、自分が思う距離感より近くに誰かが来ると、身構えてしまいますよね。逆に、親しくなりたい人が遠くにいると寂しさを覚えます。また、こうした身体的な距離に、心理面が引きずられる場合も多々あります。
どういうことかというと、いつも遠い距離にいる人よりも、いつも近くにいる人に親しみを覚えるものなのです。つまり、誰かと近くにいれば、その人とは恋愛が芽生えやすいのです。誰とも近くにいられないと、恋愛が生まれにくいわけです。
となると、コロナ禍でソーシャルディスタンスを気にしなければいけない昨今は、とても恋愛が生まれにくい環境だといえます。
たまたま、バーや居酒屋で隣の席になった人とハイタッチして盛り上がったり、ライブハウスで肩寄せあった人と一緒に拳を上げてアーティストを応援したり……そういう近い距離感で誰かと過ごすことがほとんどない今は、恋愛氷河期といえるのかもしれませんね。
こんなときは、オンラインで恋活や婚活をするなど、リアルではなかなか縮めにくい距離を、ネットで縮めていくのがいいでしょう。便利な時代。工夫をしながら、恋愛氷河期を乗り切りたいものです。
(恋愛カウンセラー・安藤房子)