極意その1 バランスのとれた暮らしをすること
“ワークライフバランス”
内閣府でも推進している、最近よく耳にする言葉です。言ってみれば「仕事と生活の調和」。 実はフランスにはこの言葉はありません。ひとりひとりの国民がバランスの取れた生活をしているので、わざわざ推進する必要がないからなのでしょう。
2015年、東京都が主催する『女性が輝くまち・東京シンポジウム』にパネリストとして招かれ、大和証券グループ本社会長の鈴木茂晴氏とご一緒しました。鈴木氏は2004年に社長に就任したときに、“ワークライフバランス”を広めようと、最長3年の育児休職、19時前退社の励行を提唱した方です。
仕事も充実させ、個人の生活も充実させる……。そうなってこそ働きがいも高まり、仕事の効率も上がる。そう考えたということです。もちろん、19時前退社の励行はなかなかスムーズにはいかなかったようですが……。
下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンも、社員の能力をより高く発揮させるために、さまざまな制度を取り入れていると聞きました。リフレッシュ休暇やNO残業の推進など、とても興味深い制度があります。
自分が社会の一員だということをもっと自覚してほしい。
市民として生きているという意識が高いフランス人は、仕事、個人の生活、そして社会生活。それらのバランスがとれてこそ、充実した生活だと考えています。
フランスで労働時間「週35時間制」が法で定められたのは2002年。日本でも「労働基準法」での週の労働は40時間ですが、サービス残業で、ほとんど実行されていない。週35時間労働が法で定められている国というのは、ヨーロッパの中でも少ないと思います。
フランスも60年代までは保守的な社会でした。結婚したら女性は主婦になるのが当たり前、女性は自分の口座を持つことも認められていませんでした。自分の人生を自由に楽しんでいる現在のわたしたちからしたら、信じられないような社会だったのです。
それらを変えていったのは市民たち。フランス女性が立ち上がり、声を上げ、署名活動などをし、1968年の「パリ五月革命」の女性解放運動などを経て、社会を変えていきました。女性の権利が確立され、男性と同等の権利を得たのは70年代以降です。これも男性の理解があってこそ。
社会を変えていくには、それなりに長い年月がかかります。いきなり社会を、とまではいかなくても、例えばあなたの上司の考えを変えるには、まずあなたの勇気ある一歩から。
「日本では無理」と、そんなふうにあきらめずに、勤務時間内にきちんと結果を出してまずは上司に認めてもらう。そして、だらだらと必要もないのに会社に居残らない。そんな勤務体制を目指すべきだと、わたしは思います。
あなたが心がけて実行していくことが、やがては社会を変える一歩になるかも。そうして自分の自由時間が増えれば、恋人や家族、そして社会にも自然と目が向くようになるのですから。
愛される男の自分革命 人生が100倍輝く フランス人の極意
ドラ・トーザン(Dora Tauzin)/著 発売日:2016年05月20日 ISBN:978-4-19-864159-7 判型/仕様:四六判 定価:本体1,400円+税
ドラ・トーザンDora Tauzin エッセイスト。国際ジャーナリスト。仏・パリ生まれ。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。国連広報部勤務後、92年からNHKテレビの「フランス語会話」5年間レギュラー出演。慶応義塾大学講師を経て、現在は「アンスティチェ・フランセ東京」、「アカデミー・デュ・ヴァン」などで講師を務める傍ら、新聞、雑誌への執筆や、講演、テレビ・ラジオのコメンテーター等多方面で活躍中。 『フランス人は「ママより女」』、『パリジェンヌ流 今を楽しむ!自分革命』『フランス人は年をとるほど美しい』など著書多数。2015 年レジオンドヌール勲章シュバリエ受章。