放送中の仲野太賀主演ドラマ「拾われた男 LOST MAN FOUND」(NHK BSプレミアム)で、仲野演じる諭のマネージャー・日立をコミカルに演じている鈴木杏。7月30日に最終回を迎えた「空白を満たしなさい」(NHK)では、自死した後に生き返った“復生者”の夫・徹夫(柄本佑)の妻をシリアスに丁寧に演じきったことから、ネット上には「鈴木杏すげぇ」の声があがっている。
特に鈴木が演じた千佳は、最終回になって母親との確執が発覚。千佳の幼少期は具体的には描かれないが、「私は世界一心が汚い子供です」と書かれた白いTシャツを着た少女が登場。実はそれが母親・薫(木野花)からの虐待だったことが視聴者には想像できる手法となっていた。
徹夫と息子の璃久(斉藤拓弥)と3人で千佳の実家を訪ね、千佳の両親とともに食卓を囲むシーンは秀逸で、焼き魚を食べながら薫は「肉は食べないんです。あれはお腹が汚れるから。腸の内側がたばこのヤニみたいに真っ黒になるんですよ」と価値観を押し付けるような圧の強いセリフをサラリと言うのだ。さらに、徹夫が自身の自死により千佳を苦しませてしまったことを薫に謝ると「やっぱり、と思いましたよ」と驚きのひと言が。薫はその理由として「千佳のせい」「千佳が原因」と淡々とした口調ながら“断定”。徹夫のことを「千佳の犠牲者」とまで言ってのけるのだ。
「その時の鈴木と木野が演じる母娘の演技の応酬は、ドラマとわかっているのに呼吸ができなくなるほど苦しくなるものでした。2人とも激しい演技は何1つしていないのに、2人から放たれる緊迫した空気が画面からあふれ出し、まさに圧巻でした。
柄本演じる徹夫が、木野演じる薫の言葉が途切れるのを待ち、『僕は彼女に会えたことが人生の中でいちばん幸福なことだったと思ってます』と笑顔で返したところで、やっと呼吸ができるようになり、これはドラマであり、目の前にいるのは毒親と毒親に育てられた娘そのものではなく、それを演じている木野と鈴木だったと我に返ったほどでした」(テレビ誌ライター)
7月26日から東京・代官山のアトリエ「goen°」で初の個展「この世界、すべてがキャンバス 鈴木杏のアトリエ展」を開催し絵画の腕前も披露している鈴木。女優画家としての今後が楽しみだ。