唐突すぎるサービスショットに、歓声があがっていたようだ。
4月18日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第12回では、主人公の槙野万太郎(神木隆之介)が内国勧業博覧会に向け東京に出発。番頭の息子・竹雄(志尊淳)と一緒に小舟で海に乗り出すシーンで幕を閉じた。
その竹雄が今回、なぜか水浴びをすることに。驚いた万太郎が止めようとするも、とばっちりでびしょ濡れになるコミカルな描写もあった。朝ドラの公式ツイッターではわざわざその場面を動画として公開し、ファンからの喝さいを浴びている。しかしなぜ竹雄は、まだ肌寒い春に水浴びをしていたのだろうか?
「その理由は竹雄が密かに心を寄せている万太郎の姉、綾(佐久間由衣)にありました。年ごろの綾には数々の縁談が舞い込み、お見合いしたこともあるものの、気乗りせず自ら破談に。そんな綾は蔵人の幸吉に気を許しており、幸吉も綾に心を寄せている様子。二人が親しくしている様子に嫉妬した竹雄が、火照る思いを水浴びで静めようとしたのでしょう」(テレビ誌ライター)
だが、この水浴びにはいささか不自然な点もあった。このタイミングで竹雄が嫉妬の炎を燃やす意味が分からないのだ。
たしかに綾と幸吉は川辺で二人きりとなり、酒造りについて言葉を交わしていた。その様子を目の当たりにすれば竹雄が嫉妬心を抱くのも無理はないだろう。ところが二人の密会を竹雄が見ていたという描写はなく、綾と幸吉が語り合っていたシーンのあと、いきなり竹雄の水浴びが始まったのである。
もしや、竹雄が二人の密会を見ていたというシーンが編集でカットされたのか。それとも三人の関係を知る視聴者なら竹雄の気持ちを当然に理解できるということなのか。ともあれ竹雄の水浴びシーンが唐突に差し込まれたことに、疑念を抱く視聴者も少なくない。
一方でこの水浴びが竹雄の嫉妬心を表すというより、制作陣の危機感を反映したものだと考えれば、唐突に映し出されたことにも合点がいくというのだ。
「本作『らんまん』に関しては、身勝手すぎる主人公の万太郎に感情移入ができないとして、早くも離脱を匂わせる視聴者が少なくありません。今回の第12回にしても万太郎の身勝手ぶりに変わりはなく、継続して視聴する動機も失われるというものです。そこで制作陣は、女性人気の高い志尊淳に上半身を露わにしたサービスショットを演じさせることで、なんとか視聴者を引き留めたいのではないでしょうか。そう思わずにはいられないほど、本作は求心力に乏しい展開になっているのです」(前出・テレビ誌ライター)
もはや登場人物の艶気に依存しなければならないほど、物語に魅力がないということか。さすがに朝ドラでは女性キャラの艶気に頼るわけにはいかず、綾を演じる佐久間がひと肌脱ぐというわけにもいかないもの。そこで白羽の矢が立ったのが、志尊だったのかもしれない。
なお、主人公のモデルとなっている植物学者の牧野富太郎博士は、作中と同じ明治14年(1881年)に東京・上野公園で開催された第2回内国勧業博覧会を見物。その際には番頭の息子を同行しており、今回のエピソードはまさに史実を踏襲している形だ。
この調子だと今後も、番頭の息子である竹雄は活躍してくれそうだ。その活躍こそ、視聴者離れを防ぐ命綱になるのかもしれない。