牛鍋を囲んで盛り上がるのは、これが最後なのかもしれない。
5月26日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第40回では、主人公の万太郎(神木隆之介)が牛鍋屋で東京大学の学生たちと気勢をあげる場面が描かれた。そこで意気投合した丈之助(山脇辰哉)との仲に、不安を覚える視聴者もいたという。
東京大学で文学を専攻する丈之助。小学校中退の万太郎が東大で研究すると聞いた当初は否定的な対応だったが、いざ万太郎が植物学教室に出入りするようになると、どうやら仲間として認めたようだ。
植物学教室の学生である波多野(前原滉)や藤丸(前原瑞樹)と共に、植物学をもっと広めるためにはどうしたらいいのかと悩む万太郎。すると丈之助は「文藝の森」と題した雑誌を取り出し、「作っちゃえばいい」とアドバイスだ。
「万太郎のモデルである牧野富太郎博士は、東大に出入りするようになった後、『植物学雑誌』を創刊。さらには印刷技術を学び、自費で『日本植物志図篇』も出版しています。その史実を下敷きとしつつ、ドラマとしての流れをスムーズにするため、丈之助を長屋仲間という設定にしたのでしょう」(テレビ誌ライター)
その丈之助だが、視聴者からは坪内逍遥がモデルではないかとの声もあがっている。実際には牧野博士が東大で研究を始める前に坪内逍遥は卒業しており、両者に接点があったとは考えづらい。ただ二人が邂逅していたとの設定はドラマ的には面白く、創作要素としては全然アリだろう。
だが丈之助と万太郎の仲が深まるなか、二人の間に亀裂が生じる可能性もまた取りざたされているという。しかもその理由が今回の作中に示されていたというのだ。それは丈之助が当時の文学に関して「こんなんで心の動きが書けるか!」と激高したシーンに表れていた。
「丈之助は『日本式の勧善懲悪』を批判。その姿は坪内逍遥が、滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』に代表される勧善懲悪型の物語を否定していたことに通じます。一方で本作のヒロイン的な存在である菓子屋の娘・寿恵子(浜辺美波)は馬琴の大ファンで、腐女子的なノリで里見八犬伝を愛読。つまり丈之助は、勧善懲悪物語を愛好する寿恵子すらも否定していることになるのです」(前出・テレビ誌ライター)
その寿恵子が今後、万太郎と恋仲になっていくのは確実。そうなると丈之助も寿恵子と知り合うことになるだろう。しかし旧態依然とした里見八犬伝を否定する丈之助が、寿恵子の馬琴愛を認められるだろうか。
その際、万太郎は恋仲の寿恵子側につくのか、それとも東大の同士と言える丈之助に賛同するのか。植物学の新しい地平を拓かんとする万太郎の姿勢はむしろ丈之助に似ているが、そこに恋心が絡んでくると話は別。どうやら今後、万太郎と丈之助が一触即発になる可能性もありそうだ。