実は誰もそのゲーム名を口にしていなかった。その事実には視聴者も驚くばかりだろう。
6月5日に再放送された連続テレビ小説「あまちゃん」第55回では、ヒロインのアキ(能年玲奈)が発案した「海女カフェ」のアイデアが具体化することに。海女クラブの面々が観光協会に押しかけ、海女カフェが実現しなかったら来期はウニを獲らないと圧力をかけていた。
その勢いに圧倒された観光協会のメンバーたちは、海女クラブが帰ったあとで口々に「ババア」との悪口三昧。駅長の大吉(杉本哲太)が「一人一人は物分かりのいいババアだけど、集団になったらグルーヴ感が増すんだよな」と文句を言えば、副駅長の吉田(荒川良々)は「ババアで行きましょうよ! 女子高生ウィズ5人のババアでしょう!」と放言だ。
その勢いで吉田は、海女クラブの面々にあだ名をつけまくることに。眼鏡会計ババア(かつ枝)、騒音ババア(弥生)、フェロモンババア(美寿々)、そして白ババア(花巻)といったあだ名に視聴者は腹を抱えて笑っていたのである。
「中でも冴えていたのは騒音ババアこと弥生(渡辺えり)への文句です。吉田は弥生の口癖『んだんだんだ!』に独特の節をつけて復唱し、『1の2面でコイン集めてんのか!』と絶叫。これにはファミコン世代の視聴者がそろって爆笑していました」(テレビ誌ライター)
吉田が復唱していた「んだんだんだ、んだんだんだ」は、ファミリーコンピュータ用ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」のゲーム中メロディそのもの。そのサウンドだけで視聴者は<マリオだ!><1の2面ってw>と笑いをこらえられなくなっていた。
しかもこの場面、吉田はもちろん登場人物も誰しもが、ひと言も「マリオ」や「ファミコン」といった固有名詞を口にしていなかったのだ。「んだんだんだ」というメロディだけでゲームの情景が目に浮かぶとは、まさに「スーパーマリオブラザーズ」恐るべしである。
「作中の2008年にはすでに『Wii』が発売されており、ファミコンゲームは過去の遺物でした。ただアキの母親・春子(小泉今日子)は昭和41年生まれで、ファミコンが発売された1983年には高2。同級生の安部ちゃん(片桐はいり)から借りパクしたファミコンソフトが登場するエピソードもあり、2歳年上の大吉も含めてもろにファミコン世代です。後輩で副駅長の吉田もさほど年齢は変わらないはずで、やはりファミコンで遊んだ世代なのでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
奇しくも4月28日には映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の上映がスタートし、現在も大ヒット真っ最中だ。世界中で「マリオ」が話題になっているこのタイミングで、作中に「マリオ」の話題が登場するという偶然もまた、「あまちゃん」が“持っている”ことの証明なのかもしれない。