そのセリフに「うっそやろ」と驚いた視聴者も少なくなかったようだ。
6月14日に放送されたNHK連続テレビ小説「らんまん」第53回では、主人公の万太郎(神木隆之介)らが植物学会誌の制作に夜通し取り組むことに。そのなかで、作中の時代には存在しなかったはずの単語が口にされていたという。
万太郎が住む十徳長屋には、東京大学の植物学教室に通う学生の波多野(前原滉)と藤丸(前原瑞樹)も集い、植物学会誌に掲載する原稿と格闘。長屋仲間で同じく東大生の丈之助(山脇辰哉)もなぜか一緒だ。
シェークスピアに心酔している丈之助は、日本の小説が勧善懲悪ものばかりであることを批判しており、心の内面を描いた作品に挑戦中。波多野と藤丸に対して「本邦初の勧善懲悪じゃない、リアリズムの小説が爆誕しちゃうんだよ?」と胸を張っていたのである。
「その言葉を藤丸が『爆誕?』と聞き返した一方で、視聴者からは《爆誕、笑った》《丈之助なら言いかねない》といった声が続出していました。今ではネットスラングの域を超えて日常的にも使われている単語ですが、少なくても明治時代に『爆誕』という言葉が存在していなかったのは明らかですからね」(ネット系ライター)
爆発と誕生を組み合わせた「爆誕」は、いまやニュース記事の見出しにも「新製品が爆誕」などと普通に使われるようになっているが、その歴史は浅い。公的に使われたのは1999年7月に公開されたアニメ映画「劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕」が初出だと言われている。
翌2000年には大槻ケンヂ率いるバンドの「特撮」が、1stアルバム「爆誕」を爆誕させている。さらには1991年から「コロコロコミック」で連載されていたマンガ「スーパービックリマン」で使われていたとの情報もあり、どうやらここ30年ほどに生まれた新語のようだ。
「この『らんまん』ではオタク要素をモチーフに取り入れており、当時の人気小説だった『南総里見八犬伝』を愛読している寿恵子(浜辺美波)が、『現八と信乃、尊い!』との言葉を発した場面は大いに話題になったもの。こちらの尊いに関しては2007年ごろから使われるようになったとの情報もあり、爆誕よりもさらに歴史の浅いタームなのです」(前出・ネット系ライター)
今回の「爆誕」に関してはなぜか、寿恵子が「尊い!」と叫んだ時とは異なり、視聴者から<萎えた><なんだかなあ>と否定的な声もあがっている。それは寿恵子が感じた尊さと同じような感情が、丈之助の爆誕からは感じられなかったからなのか。ともあれ、安易なネットスラングの多用は決して、視聴者を惹きつけるとは限らないようだ。