7月3日、NHK朝ドラ「らんまん」第66話が放送され、東京に戻った主人公・万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)の新婚生活が始まった。
さっそく洗濯に精を出す寿恵子に、十徳長屋の差配人・りん(安藤玉恵)は「9月には入ったけどさ、今日なんか干したそばから乾いちゃうんじゃない?」と声をかける。
そして、外出しようとする万太郎に丈之助(山脇辰哉)が「万ちゃん、行くのか?」と声をかけると、万太郎は「大学は新年度ですき」と答えたのだ。
「このシーンで、不思議に感じた視聴者が少なくなかったようです。9月なのに新年度ですからね。実は、この頃はまだ大学の新年度は西洋と同じく9月だったんです」と、明治時代の学制について解説するのは、歴史雑誌編集者。
「1877年(明治10年)に東京大学が創立しますが、学校年度は9月始まりで8月に終わっていました。学校制度は西洋に倣ったので、新年度が始まるのも西洋と同じ9月だったのです。それがある時から、国の会計年度に合わせ、4月スタート3月終了に変更されました。会計年度は明治の初期には旧暦10月~9月でしたが、暦が新暦に変更されると1月~12月、7月~6月と会計年度はコロコロと変更され、1886年(明治19年)から現在と同じく4月~3月に変わりました。4月始まりになった理由は、当時の日本の大きな税収が米によるものだったから。当時の日本の主産業は稲作。収穫された米をお金に換えて納税するには時間がかかり、会計年度が4月に始まるのが都合良かったということなんです」
会計年度も学校も、4月に始まるのが当たり前になった日本だが、現在は欧米諸国に合わせ大学の新学期を9月にすべきという議論もある。
日本の主産業が米とは言えなくなって久しい。その意味では、新学期を9月にするメリットもありそうだが、はたして…。
(石見剣)