これを美談に終わらせてはいけないとの指摘ももっともだろう。
フジテレビの山本賢太アナが7月26日放送の情報番組「ぽかぽか」に生出演。車いすに乗った状態でスタジオに登場し、脚を疲労骨折していることを明かした。
山本アナは7月22~23日に放送された同局の「27時間テレビ」にて、100キロサバイバルマラソンに挑戦。参加者18人中、6人のみがゴールした過酷なレースにて、見事に完走を果たしていた。
しかし真夏の100キロマラソンがあまりにも無謀な企画だったことは明らかで、山本アナは「マラソンあるあるなんですけど、ちょっと疲労骨折してしまい」と説明。今回の番組出演は決して局側から強要されたものではなく、会社側からも休めと言われており、27時間テレビ明けの週はすべての仕事を休んでいたことを明かしていた。
「山本アナは『「ぽかぽか」のために走ったんで「ぽかぽか」だけは出させてくださいっていうのを伝えて、無理言って』と告白。あくまで自分の意志で出演したことを強調していました。会社側には従業員の健康に配慮する義務がありますが、山本アナの自発的な意思も尊重されるべきであり、『ぽかぽか』出演自体はフジテレビを責めるものではないかもしれません。だからと言って局側に問題がないとも言えないでしょうね」(週刊誌記者)
山本アナの疲労骨折を巡っては、視聴者から「労災」との声があがっている。それに加えて今回の「100キロサバイバルマラソン」に参加させたこと自体に法的な問題を問う指摘もあるようだ。
同マラソンにはお笑い芸人やYouTuber、体力自慢のタレントなどが参加していたなか、山本アナは唯一の会社員。他の参加者とは異なり、彼は労使契約のもとでテレビ出演している立場だ。そこに問題がはらんでいるというのである。
労働契約法の第五条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められている。今回のマラソン出場が、労働契約の一環として行われたことは明らか。それゆえ使用者たるフジテレビ側は、労働者たる山本アナの生命や身体の安全を確保する必要があったのは明らかだ。
「他局でも局アナをマラソンに参加させていますが、通常のフルマラソンには数多くの市民ランナーも参加しているもの。日本陸連が管轄するなか安全面には十分すぎるほどの配慮を施したうえで実施されており、局アナの参加も労働契約の一環として許容範囲でしょう。それに対して今回の100キロマラソンは“サバイバル”という名前がついているように過酷さが際立っており、しかも企画自体が労働契約を超えるレベルだったのです」(前出・週刊誌記者)
今回のマラソンは「100kmの道のりを、必要以上に休憩時間を取らずに走った場合、いったいいつゴールできるのか?」という検証企画でもあった。
この「必要以上に休憩時間を取らず」という内容からして、労働契約上の安全配慮義務を逸脱しているのは明らか。そんな企画に山本アナを参加させたこと自体がすでに法律違反だった可能性は小さくないだろう。
もちろん山本アナは危険性を承知のうえでマラソン挑戦を引き受けたのだろう。しかし前出の労働契約法では使用者側に「身体等の安全を確保」するために必要な配慮が義務付けられている。果たして18人中の12人が脱落し、完走者が疲労骨折してしまうような企画にて「必要な配慮」が行われていたと言えるのだろうか。フジテレビ側の姿勢が問われそうだ。