これで周りからの扱いも変わるのではないだろうか。
8月17日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第118回では、家出から出戻ってきた足立よしえ(八木亜希子)が、家族と地元・北三陸の人々に涙ながらに謝罪。夫の功(平泉成)がよしえを受け入れる姿が描かれた。
功が脳梗塞らしき症状で倒れ、献身的な看病を続けていた1年前、よしえは財布一つだけをもって家出。テレビ局時代の上司を頼って上京していた。
出戻ったよしえはスナック梨明日で地元の人々と家族に対して、家出当時の心境を吐露。もともと仙台出身のよしえは「子育て終わったら私、終わり?」と、幸せそうな生活の中にもうすうす感じていた恐れを口にし、「かと言って余所者だし。いまさら『じぇじぇじぇ』とか言えないじゃないですか」と明かしていたのであった。
「地方生活の悩みで顕著なものの一つが、よしえの感じていた『余所者感』でしょう。地元に根付いている登場人物たちがよしえに接するときの態度には、どうしても“お客さん感”が否めませんでした。その証拠に世代の近い春子でさえ、よしえのことを『足立さん』と呼んでいたもの。夫の足立先生は県会議員かつ春子にとっては高校の担任ですが、その妻であるよしえは結局のところ『足立先生の奥さん』でしかなかったのです」(テレビ誌ライター)
ヒロインのアキにしろ最初は、春子が東京から連れ帰ってきた「東京の子」だったはず。しかし誰もが知る春子の実の娘であり、すぐに地元の方言にも馴染んだアキは、北三陸の人々から地元の子として扱われるようになっていた。
アキと親友になったユイも、誰もが知る足立先生の娘であり、北三陸生まれの地元っ子。東京生活からわずか2カ月で逃げ帰ってきたヒロシもやはり「足立先生の息子」であり、観光協会に勤務するなど誰もが認める地元の人間だ。
それに対して足立先生が見初めたよしえは仙台生まれで、盛岡のテレビ局でアナウンサーをしていた「余所者」。同じ岩手県内とはいえ、盛岡市などの内陸部と三陸海岸に接する沿岸部は生活文化面で大きな隔たりがあり、盛岡の女子アナはあくまで「テレビで観る人」だったのである。
そんな余所者だったよしえだが、家出した際に向かったのは故郷の仙台ではなく、遠く離れた東京だった。これで仙台に帰っていたら「しょせん宮城の人」とみなされていたのではないだろうか。
「北三陸に出戻ってきたよしえは『帰ってきたのは、やっぱり好きなんだと思います』と、地元愛を口にしていました。家族に会いたいのはもちろん、地元としての北三陸に帰りたかった。だからこそ大吉(杉本哲太)も『逃げて帰ってきたんだから、もう余所者じゃない!』と、よしえを地元の仲間として受け入れたのでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
海女クラブの面々が自分たちのことを「メガネ会計ばばあ」や「アンジェリーナ・ジョリー」と呼ばせようとしたのも、かつてのよしえがそういった軽口の叩ける相手ではなかったことの裏返しだ。
今や「足立家のママ」ではなく「よしえさん」として受け入れられるようになったよしえ。彼女が今後果たすであろう新たな役割に、期待は高まるばかりだろう。