10月2日に2023年度後期のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の放送がスタート。第1回の序盤では、ヒロインの福來スズ子(趣里)が「東京ブギウギ」を踊りながら熱唱するシーンに視聴者が喝さいを送っていた。
本作では戦後を中心に「ブギの女王」と呼ばれた歌手の笠置シヅ子をモデルにしており、今回の歌唱シーンでも笠置の衣装や髪型、ダンスなどを忠実に再現。趣里自身もバレエで鍛えたダンスに加え、歌唱面でもヒロイン決定後に受けたボイストレーニングの成果がしっかりと現われていたようだ。
一方で趣里の歌唱シーンに関して、疑問を抱く視聴者もいたという。それは彼女の鮮やかな歌声にあったというのだが…。
「笠置が活躍した時代にはまだ小型のワイヤレスマイクがなく、歌手は手持ちの大きなワイヤレスマイクか、有線マイクに向かって歌うしかなかったはず。しかし鈴子の歌唱シーンにマイクらしきものはなく、それでいて彼女の歌声がしっかりと伝わってくるのは不自然との指摘が少なくないのです。戦前には生声で歌う歌手も多かったものですが、鈴子の歌唱シーンでは生オーケストラが伴奏しており、さすがに肉声で楽器の音量に伍していくのは無理があるというものでしょう」(芸能ライター)
ただ笠置が「東京ブギウギ」を歌っている映像を見ると、作中の鈴子と同様にステージ上を縦横無尽に踊りまくりつつ、ハンドマイクも持たずに歌っているのが分かる。
そうなるとこれらの映像ではレコード音源に合わせてパフォーマンスしているだけなのだろうか?
「実際には当時の笠置もステージ上ではマイクを持たずに歌唱していました。その歌声をステージに設置されたマイクで拾い、スピーカーから流していたのです。作中の“日帝劇場”は笠置が出演していた日本劇場をモチーフとしており、ステージの手前側にオーケストラピットがある構造。これならステージ前側から歌手にマイクを向けることで歌唱のみを拾うことができる仕組みです」(前出・芸能ライター)
ちなみに国内の劇場で初めてマイクを使用したのは宝塚歌劇団で、昭和9年(1934年)のこと。当時は舞台袖から有線マイクのコードを伸ばし、スタンドマイクを設置していたという。
笠置がソロ歌手としてレコードデビューしたのはまさに、その昭和9年だった。パフォーマンス面での斬新さに加え、マイクを通して歌唱する面では当時の最先端を行っていた笠置。そんな彼女をモデルにする鈴子がこれからどんな活躍を見せてくれるのか、実に楽しみというものだろう。