歴史をたどると意外な発見もあるようだ。
3月18日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第117回では、ヒロインのスズ子(趣里)が「第7回 オールスター男女歌合戦」のトリを打診されることに。作中の丸の内テレビジョンがNHKのオマージュであり、同番組が「紅白歌合戦」をイメージしているのは明らかだ。
スズ子のモデルである“ブギの女王”こと笠置シヅ子は、第7回NHK紅白歌合戦にて大トリを務めていた。笠置は紅白歌合戦に計4回出場しており、この第7回が最後の出演となっている。
一方で作中では、若手の新進歌手である水城アユミ(吉柳咲良)がトリ前を任せられることも判明。まさに新旧交代を印象付ける内容となっていた。
「水城に関しては、笠置シヅ子との確執が話題となっていた美空ひばりに相当する存在だと噂されていました。ところがふたを開けてみたら水城は、スズ子が大阪の梅丸少女歌劇団時代にお世話になっていた先輩・大和礼子(蒼井優)の忘れ形見であることを判明。架空の人物となっているあたり、本作では笠置vs美空の確執は描かないことにしたようです」(テレビ誌ライター)
笠置の人物伝としては物足りないものの、水城の登場は物語前半の回収にもなっており、視聴者にとっても興味がそそられるところだろう。
その一方で今回、オールスター男女歌合戦が「第7回」となっていることに疑問を感じる向きもあったという。モデルとなったNHK紅白歌合戦は昭和26年にスタートしており、作中の昭和31年末には第6回となる計算だからだ。
ところが、この回数はちゃんと合っているという。実際、笠置が大トリを務めた第7回のNHK紅白歌合戦は昭和31年の大みそかに放送されていた。これは一体どういうことなのか?
「紅白歌合戦にはかつて、年に2回開催された歴史があります。それは昭和28年のことで、この時は第3回が1月2日に、そして第4回が大みそかに放送されました。実は最初の3回は年末ではなく、年始の番組として放送されていたのです」(前出・テレビ誌ライター)
紅白歌合戦はもともと、大正14年に放送を開始したNHKラジオの正月番組として、昭和26年に始まったもの。1月3日に放送された第1回はわずか1時間の短さで、紅白7人ずつ、計14人のみが出場というささやかな番組だった。
そこから3年連続で正月のラジオ歌番組として放送されてきたが、昭和28年2月にテレビの本放送がスタートし、同年の12月には装いも新たに年末のテレビ歌番組として「第4回NHK紅白歌合戦」が開催されたのである。
「その第4回は日本劇場で開催され、笠置シヅ子は代表曲の『東京ブギウギ』を披露しています。『ブギウギ』の作中でスズ子がワンマンショーを開催していた日帝劇場は、その日本劇場をモチーフとしており、まさに同じ会場で紅白にも出演していたわけです」(前出・テレビ誌ライター)
戦後歌謡史の観点では、スズ子の第4回出場が描かれなかったのは実に残念なところだ。果たして水城アユミと共演することになる「第7回 オールスター男女歌合戦」はきっちりと描かれるのか。あと9回のみを残す放送で、大スター・スズ子の活躍ぶりをしっかりと見せつけてもらいたいところだろう。