6月15日に最終回を迎えたドラマ「東京タワー」(テレビ朝日系)。江國香織氏による同名の原作小説とも、2005年に公開された映画とも違う「男の友情」エンドは、3作品の中でもっともサワヤカな後味を残したのではないだろうか。
この日の放送では、詩史(板谷由夏)から夫の英雄(甲本雅裕)と離婚したことを知らされた透(永瀬廉)は、かわいらしい笑顔を見せ、心のシッポがブンブン左右に振れていることがよくわかった。ところが直後に「あなたとは暮らさないわ」「1人で生きていくことにしたの」と詩史から別れを告げられると、心のシッポはあっという間にショボボン。透はいたいけなワンコのような表情に急変したのだが、この表情変化に「永瀬は演技の幅を広げたなあ」と感心してしまった。
昨年1月期放送の「夕暮れに、手をつなぐ」(TBS系)で広瀬すずとキスシーンを演じていた時には、「台本に書いてあるからキスします」という心の声が聞こえてくるようで、永瀬のきれいな顎のラインをぼんやり見ていたのだが、今作の永瀬は違った。きちんと心の動きを「空気」で視聴者に伝えてくれていたように思う。心のベクトルが内側に向いているキャラを演じるのが上手な永瀬。そろそろ静かな凶悪犯やおぞましいサイコ野郎などを演じてみてほしい。
(森山いま)