テレビアニメ「ドラえもん」(テレビ朝日系)で1979年から2005年までの26年間、ドラえもんの声を担当していた大山のぶ代さんが90歳で亡くなったのは9月29日のこと。
幼い頃から個性的な声をしていたことから、小学生時代には「男みたいな声」とたびたび指摘を受け、中学生になる頃にはそれを自覚。おしゃべりが大好きだったのにおとなしい子へと変わり、さらに中学3年間を「放送部」で過ごしたことで自身の声に対するコンプレックスを乗り越え、誰もが知る名声優として大成したのだから、コンプレックスはまさに「生きるバネ」になるということだろう。
そんな大山さんの死去から数日も経たないうちに、同じような話を塾講師の友人と大手商社に勤める友人から聞かされた。それは「“どら声”を“ドラ声=ドラえもんのような声=大山のぶ代さんのような声”だと誤解している若者が多い」というものだ。
一般的に使われる「どら声」とは、打楽器の一種である銅鑼(どら)のように太くてにごった声のことを指す。つまり「銅鑼声」なのだ。しかし「鑼」が常用漢字ではないため「どら声」と表記されることがほとんど。「だみ声」や「ハスキーボイス」と呼ばれる声と「銅鑼声」のもっとも大きな違いは「太い声」であること。大山さんの声は「太い声」ではないので「銅鑼声」ではないのだ。世の中には似て非なるものが数多く存在する。「銅鑼声」と「ドラ声」もその1つと言えそうだ。
(森山いま)