■“顔”と“恋”の関係
今回は、「恋をしている時、脳の中では何が起きているのか」 を見ていきましょう。恋愛中のカップルについて、MRI(脳の画像診断装置)を使って調べた、米・ラトガーズ大学のヘレン・フィッシャー教授の研究があります。
それは、「恋人の写真」 と「無関係な異性の写真」 を交互に見せ、恋人を見た時だけに反応する脳の場所を見つけるという実験。結果は、「男女どちらも、“恋人の顔”を見た途端、脳内の同じ場所で活発な活動が見られた」のです。“他の人の顔”にはほとんど無反応でした。その場所とは、「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」。快楽物質の「ドーパミン」を噴き出しているところです。つまり、恋人の顔を見た瞬間、ドーパミンが噴出して快感を体全体に届けているのです。恋人の顔を見て快感を得ると、また見たくなる、そして関係ない人の顔には、その顔がいかに美女・イケメンでも快感をあまり得られないのです。
これは全てのカップルに共通して見られる現象で、フィッシャー博士は、「恋の中枢」と呼んでいます。このことは何を意味しているのでしょうか。結局、「恋している二人にとって、顔は関係ないではなく、顔は関係が大いににアリ」なのですが、「美人、イケメンなど“顔の造作”には、あまり関係がない」 ということなのです。
■“恋の相手の顔”は、きっと美しい
一方で、恋をしている時、活動が抑えられている脳内の場所が発見されました。ロンドン大学 脳科学者セミール・ゼキ博士は、「恋人の顔を見た時に限って、活動が低くなる場所を発見した」のです。それが、「偏桃体(へんとうたい)」と「頭頂側頭結合部(とうちょうそくとうけつごうぶ)」。「物事を悪くとらえる場所」です。ここの活動が抑制されるということは、つまり、恋愛中の男女は「悪いところはできるだけ見ないようにしちゃう」のです。こと顔に関していえば、恋人の顔は、他のどの顔よりも素敵に、魅力的に見える―これ、いわゆる“あばたもえくぼ状態”です。
みなさんにも経験があるのではないでしょうか。「恋をしている人には、その相手は、特別な“いい顔”に見えている」ってこと。美人・イケメンに恋をするのではなく、恋をすれば、相手の顔は、美人・イケメンに見えるのです。
■恋をする前に、あれこれ考える人はいない
ヒトは、恋愛という「生き残りの戦略」の中に2つのシステムを組み込みました。「恋人にだけ快感を覚えて、夢中になってしまうシステム」と、「恋人は、いい人で、美男・美女に見えてしまうシステム」です。この2つのシステムによって、ヒトは、難しい条件なしに、つまり、あれこれ考えることなしに直感で相手を見極め、「スムーズに恋愛することができるようになった」のです。
パートナーを見つける際、誠実さ、生活力、健康など、2人が生き残るための大事な要素が判断材料になります。顔はほとんど関係ない。“美顔”は、恋の後からついてくるのです。“顔”と“恋”は、「全く関係ない」とは言いませんが、恋愛には、しっかりとチェックしておかなければならないもっと大切なポイント、「生き残りの戦略」が顔以外に、たくさんあるのです。
もう一度、大切な彼の魅力を考え直してみましょう。もう一度、あなたの恋の条件を考え直して見ましょう。2人が、外見に惑わされることなしに、“ほんとうの恋”をするために。
さて、次回は、「“顔”と“恋”」④ 男と女の恋の終わり…「“三年目の浮気”は本当だった!!」発見された「恋を支配する恐るべき脳の仕組み」を見ていきます。
(画像は「NHKスペシャル」より)
●プロフィール
なかむら・かつひろ 1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演テーマに「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」
元NHKアナ・中村克洋「人生を動かす“顔”パワー」講座/「“顔”と“恋”」③ 男と女の恋の真っ最中…「相手が美女・イケメンに見える」仕組みとは!
※このあたりに添付の画像が入ります。
■“顔”と“恋”の関係
今回は、「恋をしている時、脳の中では何が起きているのか」 を見ていきましょう。恋愛中のカップルについて、MRI(脳の画像診断装置)を使って調べた、米・ラトガーズ大学のヘレン・フィッシャー教授の研究があります。
それは、「恋人の写真」 と「無関係な異性の写真」 を交互に見せ、恋人を見た時だけに反応する脳の場所を見つけるという実験。結果は、「男女どちらも、“恋人の顔”を見た途端、脳内の同じ場所で活発な活動が見られた」のです。“他の人の顔”にはほとんど無反応でした。その場所とは、「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」。快楽物質の「ドーパミン」を噴き出しているところです。つまり、恋人の顔を見た瞬間、ドーパミンが噴出して快感を体全体に届けているのです。恋人の顔を見て快感を得ると、また見たくなる、そして関係ない人の顔には、その顔がいかに美女・イケメンでも快感をあまり得られないのです。
これは全てのカップルに共通して見られる現象で、フィッシャー博士は、「恋の中枢」と呼んでいます。このことは何を意味しているのでしょうか。結局、「恋している二人にとって、顔は関係ないではなく、顔は関係が大いににアリ」なのですが、「美人、イケメンなど“顔の造作”には、あまり関係がない」 ということなのです。
■“恋の相手の顔”は、きっと美しい
一方で、恋をしている時、活動が抑えられている脳内の場所が発見されました。ロンドン大学 脳科学者セミール・ゼキ博士は、「恋人の顔を見た時に限って、活動が低くなる場所を発見した」のです。それが、「偏桃体(へんとうたい)」と「頭頂側頭結合部(とうちょうそくとうけつごうぶ)」。「物事を悪くとらえる場所」です。ここの活動が抑制されるということは、つまり、恋愛中の男女は「悪いところはできるだけ見ないようにしちゃう」のです。こと顔に関していえば、恋人の顔は、他のどの顔よりも素敵に、魅力的に見える―これ、いわゆる“あばたもえくぼ状態”です。
みなさんにも経験があるのではないでしょうか。「恋をしている人には、その相手は、特別な“いい顔”に見えている」ってこと。美人・イケメンに恋をするのではなく、恋をすれば、相手の顔は、美人・イケメンに見えるのです。
■恋をする前に、あれこれ考える人はいない
ヒトは、恋愛という「生き残りの戦略」の中に2つのシステムを組み込みました。「恋人にだけ快感を覚えて、夢中になってしまうシステム」と、「恋人は、いい人で、美男・美女に見えてしまうシステム」です。この2つのシステムによって、ヒトは、難しい条件なしに、つまり、あれこれ考えることなしに直感で相手を見極め、「スムーズに恋愛することができるようになった」のです。
パートナーを見つける際、誠実さ、生活力、健康など、2人が生き残るための大事な要素が判断材料になります。顔はほとんど関係ない。“美顔”は、恋の後からついてくるのです。“顔”と“恋”は、「全く関係ない」とは言いませんが、恋愛には、しっかりとチェックしておかなければならないもっと大切なポイント、「生き残りの戦略」が顔以外に、たくさんあるのです。
もう一度、大切な彼の魅力を考え直してみましょう。もう一度、あなたの恋の条件を考え直して見ましょう。2人が、外見に惑わされることなしに、“ほんとうの恋”をするために。
さて、次回は、「“顔”と“恋”」④ 男と女の恋の終わり…「“三年目の浮気”は本当だった!!」発見された「恋を支配する恐るべき脳の仕組み」を見ていきます。
(画像は「NHKスペシャル」より)
●プロフィール
なかむら・かつひろ 1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演テーマに「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」