子供の頃からよくカップラーメンを食べてきました。原風景として覚えているのが、近所にコンビニエンスストアというものがオープンし、そこで「サッポロボーイおもしろカップ」という子供向けのカップ麺が売られるようになったことです。
調べてみると、1980年代の半ばから後半にかけて販売されていた商品で、蓋をあけるとプラモデルなどのオマケが入っているというコンセプトの、そりゃあもう子供にとっては大喜びの品。小学生だった私はお小遣いでそれを買い、オマケが目当てだったものの、カップ麺の方も食べて、味が気に入り、そこからカップ麺全般が好きになっていきました。
「サッポロボーイおもしろカップ」と同じサンヨー食品というメーカーから発売された「ケンちゃんラーメン」(志村けんがモチーフになった商品でした)もよく食べたし、さらに中学生、高校生とだんだん大人になっていく過程でも、様々なカップ麺を食べてきたと思います。
そしてすっかり大人になった今でも頻繁に食べるんですが、「カップ麺をつまみに飲む酒がうまい!」などと言っている人は、あまりいませんよね。しかし、私はカップ麺をつまみに酒を飲むのが好きなんです。つまみにするというか、カップ麺を普通に食べて、傍らに水やお茶ではなくビールやチューハイがあるという感じです。
ほとんどのカップ麺の麺は、お湯を注いで食べ頃になった瞬間から刻一刻と伸びていってしまうので、麺を1口すすって酒、とゆっくり楽しんでいる暇はありません! 3分の1食べたところでグイッと酒、また3分の1食べてグイッぐらいでちょうどいい。塩気を酒でぷはーっ! と流す感じです。
ちなみにパリッコさんが前回のコラムで書いてくれていた「ホームラン軒」(もともとカネボウフーズから発売され、現在はテーブルマークで製造されているご長寿カップ麺)は、時間が経っても比較的麺のコシが残っていて、その麺の食感が好きなんです。
かなりカップ麺を食べる私ですが、カップ焼きそばにはあんまり手が伸びないんです。おそらく、酒のつまみには焼きそばの方が適しているかと思うのですが(ゆっくり食べて多少冷めてもおいしいし)、年に1回か2回しか食べたくならないんですよね。不思議。
そのかわり、カップうどんやカップそばは結構食べます。居酒屋で飲んだ帰り、最近ではマルちゃんの「赤いきつね」をよくコンビニで買って帰ってシメにしています。カップラーメンよりも少しだけヘルシーな気がするんですよね。あと、あの甘いお揚げを酔った体が欲するんです。モチモチした麺も好きです。
「緑のたぬき」も最高ですね。コンビニで赤いきつねと緑のたぬきを前に「どっちにしようかなー! いやー! 決められない!」とどれだけ悩んできたことか。どっちも捨てがたいです。
しかし、こんな私なんですが、年越しそばはいつも近所のそば屋でテイクアウトしています。そば屋で食べるそばはおいしいのに、同じ店のものをテイクアウトして家で茹でるとあんまりおいしくならなくて、正直なところ緑のたぬきの方がおいしい気がします。しかし、こうカップにお湯を注いで5分後にはもう食べて終わってしまう、あのスピーディーさが大晦日にはあまりにもったいない気がして…。
でも毎年、年の瀬のテレビを見ていると、カップそばの年越しそばバージョンのCMが放送されていますよね。あれはどん兵衛かな。あれだけCMが流れているということは、年越しそばをどん兵衛や緑のたぬきにしている人も相当いるんでしょうね。今年もいつの間にか年の瀬ですし、カップそばで年越し、試してみようかな! 次回のテーマは「昨年(24年)のベスト酒シーン」でどうでしょう!
スズキナオ:東京生まれ、大阪在住のフリーライター。著書に「遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ」「『それから』の大阪」他。「家から5分の旅館に泊まる」が絶賛発売中。