京都の長い歴史に裏打ちされた伝統料理。「おもてなし」を基本とし、四季あふれる色彩も表現された絶品グルメを現地ジャーナリストが渾身レポートする―。
祇園花見小路を入って少し歩いたところに洋食の名門「グリル大仲」(京都府京都市東山区祇園町北側347―111)=予算:(夜)8,000~10,000円=はあります。目立ちにくいまっすぐ入った路地を抜けると、祇園東の名所である路地を越えた場所に“ありがたい神社”鶴亀神社があるんですね。京都に来た際は、こちらにもぜひ立ち寄っていただきたいと思います。
その一角に店を構えるこの老舗洋食店は狭い入り口で、鰻の寝床のような店内。うまい洋食を長年提供してきて、洋食といってもフレンチ寄りの味わい深い料理の数々がそろいます。そう言いながらも格式ばったものではなく、お箸で食べるという“くずし洋食”メインです。
今回は筆者が舞妓、芸妓が冠婚葬祭で利用する会員制の同店の、歴史ある味、店構え、雰囲気をお伝えしたいと思います。
店に入ると祇園の街との雰囲気に合った激渋の雰囲気。長年積み上げてきたあめ色になった店内に座敷とカウンターがあり、くつろぎの空間が広がっているわけです。
葬祭後だったためにビールで、亡くなられた祇園の生き字引である芸妓歴数十年のお母さんに献杯!
はじめに運ばれてきたのはキノコとじゃがいものポタージュ。クリーミーな舌触りのスープは体が温まること請け合い。その味わいも細胞のひとつひとつに染み込んでいきます。
サラダにはハムが入り、濃厚なドレッシングが垂らされ、「おかずサラダ」になっています。これでどんぶり飯1はいけるボリューミーな1品です。
次は瓶ビールから生へと変えて、自分だけの食事タイムを堪能します。
付け合わせに出てくる、笹の葉に包まれたおこわがうまい。ご飯ものはこれで決まりです。和洋折衷という言葉を絵に描いたメニューの数々ですね。うまい、うまい!
そしてメインは、これまた旨味が凝縮したソースがおいしい、スズキのポワレ。
一見、魚の風味が強そうなイメージですが、料理人の腕によって施された、表面はカリッと中はほわりと舌の上でほどける柔らかさがクセになりました。
(丸野裕行)
●プロフィール
まるの・ひろゆき:ライター、脚本家、特殊犯罪アナリスト。1976年、京都市生まれ。フリーライターを生業としながら、求人広告制作会社のコピーライター、各企業の宣伝広告などを担当。ポータルサイト・ガジェット通信では連載を持ち、独自の視点の記事を執筆するほか、原作者として遠藤憲一主演の映画「木屋町DARUMA」を製作。文化人、タレントとしてテレビなどにもたびたび出演している。