時代に翻弄された男女2人の人生を、地球上のある地点に固定されたカメラが数十年にわたり映し出す─。本作は、その「場所」で生きる者たちを描いたヒューマンストーリーである。
ロバート・ゼメキス監督が、最新のAI技術を駆使して描いた野心作で、主演はトム・ハンクスとロビン・ライト。「フォレスト・ガンプ/一期一会」(94年)のキャスト・スタッフが再結集し、家族の数世代にわたるドラマが繰り広げられる。
地球上のある場所では、恐竜が暮らし氷河期を迎えた。やがて先住民が暮らし始めて、いくつもの家が建つ。1945年、戦争帰りのアルとローズ夫妻の待望の息子として誕生したリチャード(トム)。成長した彼は、マーガレット(ロビン)と恋に落ちる─。
定点観測といっても退屈とは無縁だ。メインとなるのは1945年~現代。このパートを受け持つのがリチャード夫妻だが、驚くべきことに彼らはティーン時代から老境まで代役も特殊メイクも一切使わず演じきったという。その代わりに使用したのが、人物の顔を別人に置き換えられるディープフェイクのAI。これがかつてないレベルの「ディエイジング(若返り)」に仕上がっているのだ。これまでも撮影後にCGで人物の顔を変換することは可能だったが、AIは、撮影現場で変換できるため、役者がその場で映像を確認して、姿勢や動きを微調整して撮影し直すことも可能だという。
ロビンは現在58歳。「フォレスト・ガンプ」の頃のピチピチした20代の彼女が熟美女になり、本作で、“ベッドシーン”(ソフトではあるが)まで演じるのだから、まさにAIさまさまだ。ハリウッドが本気でAIに取り組んだ第1弾。必見の面白さと言える。
(4月4日=金=TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開、配給 キノフィルムズ)
前田有一(まえだ・ゆういち)1972年生まれ、東京都出身。映画評論家。宅建主任者などを経て、現在の仕事に就く。著書「それが映画をダメにする」(玄光社)、「超映画批評」(http://maeda-y.com)など。