2016年に三浦春馬さんとW主演したミュージカル「キンキ―ブーツ」を観た時、小池徹平の実力に驚かされた。2006年からスタートした「医龍」(フジテレビ系)がシリーズ化され、小池演じる「ボクちゃん」と周囲から呼ばれていた伊集院登がメキメキと成長する過程を見ながら、小池はこのまま「二枚目キャラしか演じない正統派主演役者になるのだろうな」と思っていたが、現実は違った。
たとえば昨年放送の「離婚しない男‐サレ夫と悪嫁の騙し愛‐」(テレビ朝日系)では、積年の恨みを不倫で返すために美容整形で顔まで変えた司馬マサト役を好演。恨んでいる男の妻である綾香(篠田麻里子)との愛の交歓シーンでは「クイックorスロー?」と質問するなど、シリアスとコミカルが絶妙な艶技に驚かされた。
前クール放送の「私の知らない私」(日本テレビ系)では、優しくて妻思いの外科医に見えて、実は母親に頭が上がらず、自分のことしか考えていないクソ野郎だった西島奏多の二面性を違和感なくサラリと演じ、小池は「つまらない正統派主演役者」でなく「ワクワクするトリッキーなキャラが得意な役者」へと成長を遂げたといっていいだろう。
4月27日放送の「メシドラ~兼近&真之介のグルメドライブ~」(日テレ系)にISSAとともにゲスト出演した時には、現在39歳ということから「40代を迎えることにワクワクしてる」「20代の頃とは違う自分との向き合い方がしたい」と言い、「父親になってから感受性が変わった」と興味深い発言があった。年齢を重ねると「涙もろくなる」と世間では言われているが、「マジでそうなのよ」と言うと、自身が体験したエピソードを明かすひと幕があった。
先日、小池の息子の「お遊戯会」があり、そこで息子が「劇」を披露したそう。1人に1つずつセリフがある「劇」だったのだが、小池は舞台に立つ仕事をしているせいか、息子の劇に「変なプレッシャー」を感じていたという。「(たとえ)できなくたって、頑張ったっていう過程が大事じゃん。なのに自分の思いがなんか乗っかっちゃうわけ。(自分が)舞台に立っている以上『頼む、息子!』みたいな。ウチで(息子が)めっちゃ(セリフを)練習してたから、『言えるかな、言えるかな』って(自分が)めっちゃ緊張して。(息子がそのセリフを)言えた時に、なんかブワーッ!みたいな。なんか、うれしくて、感動しちゃって」と回顧したのだが、もしかすると父親になって「感受性が変化した」ため、現在の「トリッキーなキャラが得意な小池」になったのかもしれない。
8月からは東京・東京建物 Brillia HALLを皮切りに全国各地で、平野啓一郎氏の名作小説「ある男」のミュージカルに浦井健司とW主演する小池。同小説が映画化され2022年に公開された時には、窪田正孝が演じた「ある男X」の役を小池が演じることになる。どんな「ある男X」になるのか楽しみだ。
(森山いま)