6月22日放送のMHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第24話の冒頭で、生田斗真演じる一橋治済と原田泰造演じる三浦庄司が、相次いで鳴らしたアイヌ民族の伝統楽器・ムックリ。ムックリとは、竹製の薄い板にひもが付いていて、そのひもを引くことで竹製の板を震わせ、口の中に共鳴させることで音を出す「口琴」の1種である民族楽器のことだ。
放送後には、生田と原田がムックリの練習風景を番組公式インスタグラムで公開。生田は「口を開ける大きさで音が変わる」と言いながらやって見せているのに対し、原田は「むずかしい」と言い「鳴る日と鳴らない日があるの」と苦戦している様子が動画に収められている。
そんな始まり方で、脳が「音楽」に傾いていたせいか、橋本愛演じる「てい」の“前の旦那(新名基浩)“が、行き遅れていたていに熱心に言い寄って結婚したものの、3カ月もしないうちに吉原に通い始め、店の金を使い込んでしまったという過去が明かされた時に、橋本がカバーして歌っている太田裕美の名曲「木綿のハンカチーフ」を思い出してしまった。
橋本が歌うこの曲は、とても哀しく胸がキュッと締め付けられるのだ。橋本には健康的で幸福そうな恋愛より、好きな人による裏切り行為で哀しむ恋が似合う気がしてしまうのは、おそらく橋本バージョンの「木綿のハンカチーフ」を聴いてしまったからではないかと思う。
ていが、“吉原者”の蔦重(横浜流星)を毛嫌いしているのは、おそらく前の旦那のせいだろう。だから吉原者を嫌うというまっすぐさが、かわいらしくて仕方がない。橋本には悲恋が似合うが、ていには蔦重と一緒になることで早く幸せになってもらいたい。
金の工面のため屑屋に本を売ると本は本ではなくなる。寺に渡して子どもに読んでもらえれば、本としての務めを立派に果たせる。本が子らに文字や知恵を与え、その一生が豊かで喜びに満ちたものとなれば、本も本望。本屋の本懐。
そう言っていたていを寺の陰から見ていた蔦重が、「丸屋」の名前を残したまま一緒に本屋をやろう、さらには一緒になろう、と“プロポ―ズ”までしてしまった気持ちがとてもよくわかる。
ていには今度こそ「木綿のハンカチーフ」とは違う、幸福な結婚生活を送ってほしい。
(森山いま)