NHKアナ・中村克洋「人生を動かす“顔”パワー」講座/顔のサイエンス⑧人はどんな状況からも“チャレンジ顔”で力強く立ち上がれる!
前回、私は“チャレンジ顔”という“晴顔”でガンの治療にのぞみ元気を取り戻したというお話をしましたが、実はその後も、病気や不幸な出来事が私を襲っています。ごく最近も手術を受けたのですが、これらも“チャレンジ顔”で前向きに乗り切ることができています。「不幸を、チャレンジとして捉え直す」と「結構うまくいく」のです。
今回は「“チャレンジ顔”で生きていく」という生き方についてお伝えしたいと思います。
東日本大震災で、家族を失い、何もかも流されてしまった宮城・気仙沼の男性がこう話していました。
「中村さん、みんな『神も仏もあるものか』って言うけど、神様はいるんだよ。なーんもなくなったけど、私の命だけはある。私に、“生きて何かしろ”って、神様はそう言っている。家や土地は、また手にいれればいい。思い出は、心の中にある。一番悲しい家族の死は、乗り越える、供養する、そのぶんまで生きる!」
この言葉に、私は愕然としました。この人は、すべてを失ってしまった。生きる意味も希望も。なのに「生きる」と言う。「生きてやる!」と言う。私と一緒に行った復旧ボランティアの学生たちも粛然として聞いていました。
「自分は生きている」という現実に希望を見出して、生きることに全力でチャレンジする。そんな生き方が人間にはできるんだ。「生きる」という“究極のチャレンジ”が、私たちには、最後の最後に残されているのだ。この事実に、私は感動しました。
確かに究極のチャレンジを実行する段階では、やはり“努力”や“ガマン”や“頑張り”といった快感とは思えないようなものも必要です。でも、思い出してください。「人間(生き物)は、『生き残りの戦略』を実行する時には、かならずドーパミンという快感ホルモンが噴き出し、快楽を感じるようにできている」という事実をご紹介したことがありますよね。「こいつ(病気や不幸などのマイナスの出来事)を、どうやって、やっつけてやろうか」という、生き残るための闘争本能に火がつくと、一気にドーパミンが噴き出て、努力やガマンや頑張りが“快感”になるのです。“チャレンジという快楽”が生まれるのです。私が、過去取材してきたたくさんの不幸の現場でも、チャレンジ顔で力強く立ち上がっていく人々の姿が、必ずありました。
大震災から10年後、被災した方から、こんな言葉を聞くことができました。
「同情とか、頑張りとかっていうことば、あまり好きじゃないけれど、“負けてたまるか”という思いだけは、いつも心に持って、10年間を生きてきました」
“負けてたまるか”というチャレンジ顔で生きている人は、「“晴顔”開運原理」で生きることができるので、逆境に対する抵抗力が強いのです。病気や不幸になったという事実は変えることは、できないけれども、それに対する考え方を変えることは、自由にできます。いつも笑顔で生きることはムリでも、チャレンジ顔という“晴顔”は、どんな不幸の現場にあってもできます。結果として、「“晴顔”のパワーが、病気や不幸をやっつける」のです。バイアス(見かた、考え方)を変えて、不幸に、チャレンジ顔で立ち向かって生きていくと、快感が生まれ、まるでマジックのようにすべてが好転、万事がうまくいくのです。
これが「バイアス・マジック」です。これで、不幸を脱出して、生きていけます。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」
