最近話題になっている「マインドフルネス」という言葉、聞いたことありませんか? これはアメリカの大手IT企業や医療保険会社など、多くの大企業で取り入れられている“脳の休息法”です。
たとえば十分に休んだのに疲れが取れない。あるいは複数のタスクを抱えて忙しい日の夕方、デスクワークがメインなのに肉体的な疲労を感じるといったことがあると思います。これはすべて“脳疲労”が原因なんです。
「脳は何も考えずにぼーっとしていれば休まると思っている人が多いでしょう。でも、それでは頭は休まらないのです」
こう話すのは、アメリカ・ロサンゼルスで精神科を開業している医師の久賀谷亮さん。著書「世界のエリートがやっている最高の休息法」(ダイヤモンド社刊)は、今やベストセラーになっています。
取材した久賀谷さんの話と著書によれば、脳には“デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)”という領域があり、何もしていない時でも盛んに働いているんだそうです。
「脳は体重の2%ほどの大きさですが、体が消費する全エネルギーの20%を使っています。また、そのほとんどはDMNが消費していて、脳全体のエネルギーの60~80%を占めていると言われています。だから何もしていなくても疲労感が残ったり、抜けなかったりするのです。
逆にいろいろなプロジェクトが同時進行していて、アレもコレもと違った仕事をこなさなければいけない時は、脳の様々な領域に指令を出す役割もしているDMNに負担がかかって、整理できなくなるのです。それで強い疲労感を感じるようになります」(久賀谷さん)
よく「頭がフル回転して疲れた」などと言いますが、まさにその通りのことが起こっているのです。この状態から抜け出して脳を休ませる方法が“脳科学”と“瞑想”を組み合わせたマインドフルネス。瞑想などというと、ちょっと怪しい感じもしますが、きちんとした脳の測定によって、効果が科学的に実証されている方法です。
やり方はたくさんありますが、最も簡単ですぐにできるのが“呼吸法”です。椅子に浅く腰掛けて背もたれから背中を離してまっすぐにします。お腹をゆったりと保って、手は太ももの上に置き、軽く目を閉じます。手と太ももや椅子の座面とヒップ、そして床と足の裏などの接触する感覚に注意を向けます。そして普通に呼吸して、鼻を出入りする空気の感覚や胸やお腹の上下動、吸う空気と吐く息の温度の違いなど意識を向けます。
「そうやっている時も頭の中にはいろいろな考えが浮かぶと思いますが、それが雑念です。雑念を消そうとせずに、呼吸に意識を向けることだけに意識を持っていけば、落ち着いてきます」(前出・久賀谷さん)
脳は、いくつもの事柄を同時にこなす、マルチタスクは不得意。何かに意識を集中させた時のほうが休まるそうです。1日5分でも10分でもいいので、継続させることで脳は休みやすくなっていきます。最近イライラしがち、注意力が散漫、なんて言う人にも良いので、脳や肉体に疲労を感じている人は、試してみてはどうでしょうか。
(医療/フィットネスライター・松尾直俊)