ソチ五輪で金メダルに輝いた後も羽生結弦の進化は止まらない。男子フィギュア界は4回転ジャンプ時代に突入し、「スケート人生の集大成」となる18年の平昌五輪に向けた戦いはますます熾烈を極めている。グランプリファイナル4連覇を達成した「絶対王者」のこれまでの軌跡を追った──。
16年11月に行われたフィギュアスケートGPシリーズのNHK杯では今季世界最高の301.47点で連覇、続くグランプリファイナルでは293.90点で史上初となる4連覇を達成した羽生結弦。10月のカナダ大会では奮わなかった得点を大きく伸ばしての快挙だ。ケガから復帰してのこの活躍、大きな要因は「コーチとの信頼関係」にあるという。スポーツ紙記者が語る。
「羽生はケガの治療のため練習のスタートが遅れ、また、新しい4回転ジャンプを取り入れたこともあり、ジャンプの練習を中心にしていたといいます。開幕直前までジャンプ中心の練習だった羽生に、ブライアン・オーサーコーチは滑らかな演技のためにスケーティング部分の練習もしたほうがよいとアドバイスした。ところが、羽生はジャンプがきちんと跳べないとスケーティング部分に集中できないからと、練習法を変えなかったそうです。13年にも羽生はジャンプの修正を巡ってオーサーコーチと口論し、怒らせてしまったことがありましたが、彼は納得がいかない限り絶対に自分を曲げません」
テレビで解説をしていた佐野稔氏は、近いうちに羽生が350点台を出すのも夢ではないと分析していたが、スポーツライターもその意見に同意する。
「すべての構成要素を完璧に滑って330点くらいだとして、さらに加点がつくような精度で滑れば点数はアップしていく。ジャンプの失敗だけでなく、今年の全体の出来は昨年に比べると今ひとつ。一つ一つの要素を昨年の世界歴代最高得点のレベルに持っていけば相当な加点がつきますから、佐野氏の分析は“裏付けのある確信”と言えるでしょう」
男子フィギュア界はついに4回転ジャンプ時代に突入した。すでに4回転のトウループ(基礎点10.3)とサルコー(10.5)は当たり前で、18歳の宇野昌磨はフリップ(12.3)、19歳の金博洋(中国)はルッツ(13.6)を、そして17歳の新鋭・ネイサン・チェン(米国)はこの4種類全てを公式戦で成功させている。
もちろん、ただ跳べればいいというわけではない。フリーでの成功本数が問われ、4回転-3回転のコンビネーションも必須テクニックだ。スポーツ紙デスクが解説する。
「羽生の武器は4回転ループ(12.0)。世界でただ1人、公式戦で成功させています。エキシビジョンだったとはいえ、4回転ループ-3回転トウループのコンビネーション(16.3)もきれいに着氷させて見せました。グランプリファイナル後の会見では、まだ誰も成功させていない大技4回転アクセルについての質問が飛ぶと、羽生は『4回転アクセルはスケートを始めた頃からの僕の夢。いつか試合で入れてみたい』と、目を輝かせていました」