16年6月、歌舞伎役者・市川海老蔵が記者会見を開いた。妻である小林麻央の乳がんを公表し、がんのステージについての問いには「簡単に治らない」との説明に終始したものだ。
後に小林自身がブログで、「ステージIV」であることを告白。今なお闘病中の姿を世間に向けて発信している。
乳がんといえば、元女子プロレスラー・北斗晶の例も記憶に新しい。胸の腫瘍、さらには脇のリンパへの転移を取り除くための手術が行われ、右の乳房を全摘出したことが知られている。
さらに海外ではアンジェリーナ・ジョリーが両乳房摘出手術を受けた。自身の母や叔母が乳がんに倒れたことを受け、「自分も高確率で乳がんにかかる」と考えた末の、乳がん予防のための処置だ。
国立がん研究センターの調査によれば、昨年新たに乳がんと診断された数は8万9000件を超え、前立腺がんと並んで増大傾向にある。また乳がんによる死亡者数は1年間で1万3800人(15年度)と、白血病や卵巣がんよりも多い。
たびたび取りざたされる女性有名人の例もあり、より身近な病気との印象がある乳がん。実際の検査や治療の実態はどうなっているのだろうか。また、他の部位のがんとの違いはあるのか。乳がんの基礎的な部分を解説していこう。
乳がんの発症率は、35歳以降にぐっと増える。
「かつては高齢になるほど発症率が減るというのが定説でしたが、今は60、70代以降の高齢者も乳がんになる人が増えています」
そう語るのは医療ジャーナリストの向井修吾氏。それでは乳がんの生存率は、他のがんと差があるのか。
「実は5年生存率は、他の部位と比べて高い傾向にあります。『乳がん検査を受けましょう』と盛んに叫ばれ、早期発見が増えたためと考えられます」
公益財団法人「がん研究振興財団」の調査によれば、乳がんの5年生存率はステージIの場合、95%を超える。では、乳がんと他のがんとの違いは何があるのか。向井氏によれば、「痛みなどは変わらないが、乳房摘出手術が行われることで、女性としての尊厳が失われる」ことに苦しむ女性が多い点だという。
実際に乳房摘出手術を受けた女性に話を聞いた。
「お風呂上りに鏡を見ると、オンナじゃなくなっちゃったんだなぁって、何だか気持ち悪くなりますよ」
乳がんならではの影響だ。