早期発見であれば完治の可能性が高い乳がん。ここからは検診の最新事情を解説していく。政府は40歳以上の女性に対して年1回の検診を推奨しており、通知書を送付している。自治体により異なるものの、通知を持って指定医療機関に行くことで、基本的には0~3000円程度で検診を受けられるシステムだ。
制度上30代は自己負担となる場合が多い。それでもその年代から検診を受けるべきだと、向井氏は言う。
「若い年代でも乳がんと診断される人が増えています。今では年に1度は検査を受けるべきというのが新常識ですね」
それでは実際にどういった検査が行われるのか見ていこう。
【1】視触診:目視で乳房のくぼみやひきつりを確認。さらに手でしこりやリンパの腫れ、乳頭から血性の分泌物の有無を確認する。
【2】マンモグラフィー:乳房を板で挟み、X線を照射。検査画像において白く写しだされたものが、小さい状態のがん。
【3】エコー検査:30代以前の女性はこちらの検査が主流となる。高周波数の音波を出し、乳房内の異物を写し出す。
【4】MRI/CT:磁場とX線を使い、検査画像上で身体全体を輪切りにして腫瘍の広がりや正確な位置を視る。
また検査にかかる費用は、年代や属性によって変わる。
●40歳以上で国民健康保険に加入している人:初回検診は無料。2回目以降は1000円
●40歳以上で社会保険に加入している人(扶養含む):加入する組合によるが、1000円~3000円程度
●40歳未満:全額自己負担で受ける場合がほとんど。1万5000円~2万5000円が相場
40代未満の人はどうしても値が張ってしまうものの、先述したように定期検査を受けるべきだ。
マンモグラフィー検査は痛いと知られているが、特に出産経験のない女性の場合、乳腺が張っている関係で痛みが強く出る。逆に経産婦の場合は痛みが軽減される。また、月経前よりは月経後のほうが、痛みは少ないことも覚えておきたい。
ここまでは現在主流の検査方法を説明してきたが、導入されている医院は少ないものの、さらに精密な結果を得られる最新検査が出てきている。
「『3Dマンモグラフィー』です。これまで2Dだった同検査と比べて、がんの発見精度が2~4割程度高まっています。また、従来のものより痛みが軽減されているのも特徴です」(向井氏)
こちらの検査は2万円程度と割高ではあるものの、今後、広く普及していくことにより、負担額は下がっていくと予測されている。
もう一つ、「PEM検査」も注目を集めている。こちらはFDGという検査薬を注射し、身体を特殊なカメラで撮影することで、従来よりも小さながん細胞の存在や位置、進行具合を確認できるものだ。費用は12~20万円弱程度かかるものの、13年7月より保険適用となり、自己負担額は3万6000円から5万円ほどで済むようになった。検査薬には少量の放射線を出す物質が含まれているため、妊婦や14歳以下の女性は検査対象外となる。
乳がんは早期発見であれば治る病気。しかしステージが進行するにつれて、手術だけでは対処できず、長く苦しい闘病生活を送ることとなってしまう。
冒頭の小林麻央の場合、ステージIVだ。この段階では手術による治療は見込めず、抗がん剤やホルモン剤の投与が主となる。
さらに全身への転移が認められれば、治療の目的は完治ではなく、痛みの緩和を目指す薬物療法へと切り替えられる場合が多くなる。