「もう少し競争心を持って本気で戦え!!」と怒りたくなってしまうほど、自分よりも相手のことを優先してしまう我が子の性格に悩む、お母さんからのご相談をよくいただきます。
2年生のSちゃん。運動会の障害物リレーで、ダンボールの筒に入って前に進む課題に挑戦することに。お母さんは応援して見守っていました。そして、我先にダンボールを手に入れようと3人ほどが団子状態になり、「うちの子はどうするかな、転ばないかな」とドキドキしていると……、なんと!別の子に順番を譲っていたのだとか。「そんな場合じゃないだろう!」と、思わず口に出すところだったそうです。
3年生のOくん。仲良しの友だちに、漫画『ドラえもん』でいえばジャイアンタイプの子がいるそうです。Oくんはその子に媚び、何かあれば雑用係のように積極的に動くのだとか。Oくんとしては、友だちが大好きなので協力しているだけとのこと。でも、他の友だちに砂をかけて遊んでいるジャイアンくんに、せっせと砂を運んで渡している我が子を見たときは、相当がっかりしたそうです。
これらの事例からは、「もっと自分を大切にして、自分にとって価値あることに積極的に挑戦して欲しい」という、お母さんの願いがみえるようです。とはいえ、SちゃんやOくんのように、相手の喜びに自分が寄与することで自身の幸せを感じるタイプは、これから築いていく友人・恋人関係でも、その子自身の人間的魅力としても大きな価値を持ちます。ですから、まずは素敵な力であることを認め、「お友だちを大切にできる、素敵な力を持っているね」などと、言葉にして伝えてあげてください。
そのうえで、「でも、全力で思いっきりやり抜いてくれると、お母さんはとってもうれしい」と伝えましょう。その場合は、「家族のために頑張ろう」などと、自分以外の誰かのためにという動機付けをしてあげるのがオススメです。
また、Oくんの事例のように、“誰かのためにやっていることが他の誰かを傷つけることにならないか”ということだけは、しっかり考えさせたいものです。気付いたらいじめに寄与してしまい、自分まで加害者になってしまうようなことはよくありません。そうならないためには、自分のためにではなく、相手のために、その周りの人のために、大切な家族のために、という視点で考えるように促してあげましょう。そうすれば、きっとスムーズに行動できるようになります。
「相手に尽くしたい」という素敵な気持ちはそのままに、「全力でやり抜く」楽しさもまた、経験させてあげましょう。
(Nao Kiyota)