5月24日公開の映画「空母いぶき」は、ある国から攻撃を受けた海上自衛隊が総理大臣の決断の下で対応していく様を描いたもの。この中で佐藤浩市が演じている総理像が、作品以外の部分で物議を醸しているようだ。
実は今世紀に入り、外部からの攻撃に日本政府がどう向き合うかを描いた作品が増えた。当然、政府のトップである総理も登場する。「宣戦布告」(02年)は、某国の潜水艦が座礁し、戦闘工作員が上陸してきて自衛隊と交戦するが、ここでは古谷一行が対応に苦悩する総理像を見せた。テロリストに自衛隊のイージス艦が占拠される「亡国のイージス」(05年)では、冷徹な政治屋から人道者へと変化していく総理を原田芳雄が演じた。日本アルプスに米国ステルス爆撃機が墜落し、その奪還に立ち向かう「ミッドナイト・イーグル」(07年)では、ジョギングが趣味でコンビニおにぎりを頬張る人間臭い総理を藤竜也が好演。「シン・ゴジラ」(16年)では、ゴジラ襲来に自衛隊の防衛出動など難しい決断を迫られる大河内総理を大杉漣が、その後を継いで米国との外交折衝に当たる里見総理を平泉成が演じた。
「亡き原田さんは当時、かつてアウトローを演じていた自分が体制側の総理をどう見せるかで非常に葛藤していました。いずれの作品でも50代後半から60代中盤の俳優が総理役に選ばれており、彼らは皆、ひとかどの俳優人生を歩んできた演者で、紋切り型の総理にしないために腐心しています。そこで彼らが出した答えは、総理としての責務を果たしながらも、いかに人間として自身が寄り添える役にするかということ。今回の佐藤さんのアプローチも同じと言えるのではないでしょうか」(映画ライター)
今年9月公開予定の三谷幸喜監督・脚本、佐藤浩市も出演する「記憶にございません」では、一時的に記憶を失った“支持率史上最低”の総理を中井貴一が演じているが、これにも物申すような人がいるのだろうか。