15‐16年のフィギュアスケートの国際大会は3月末の世界選手権を残すばかりとなった。スケートファンからは、四大陸選手権の出場を回避して世界選手権に懸ける浅田真央の最高の演技を待ちわびる声も多い。
今季はFSでプッチーニのオペラ「蝶々夫人」を選び、その大人な表現力に絶賛の声が集まる浅田だが、一方で異論を唱える人も。
「『蝶々夫人』は、海軍士官・ピンカートンとの恋愛悲劇で、浅田はオペラの中の“ある晴れた日に”というアリア(独唱曲)を使用しています。曲の部分をつなぎ合わせてメドレー風に仕立てる選手が多いなか、1曲だけの構成は“大人の表現力”で本格的に演じ切りたいという浅田の思いが強く感じられます。しかし、せっかく1曲にしたのだから、もう少し解釈を加えるべきだと思うのです」(音楽大学講師)
浅田選手が、帰ってこない愛する人を待つ切ない思いを込めた表情や演技を表現できれば絶賛のスケーティングと言えるだろうが、このアリアは少し具合が違うらしい。
「このアリアは、もう彼は帰ってこないと断言する女中に、そんなことはない、帰ってくる、ほら、こんな風にして、と想像しながら愛を信じ希望を力強く歌い上げる場面なのです。しかし浅田は、『蝶々夫人』はピンカートンに捨てられた悲劇という歌劇全体のテーマに引っ張られているように思います。芸術ですから解釈はいろいろですが、沈んだ表現では浅田の勝ちに行く気持ちの強さを表せない。このアリアの部分の盲目的な愛の強さを表現してほしいですね」(前出・音楽大学講師)
ぜひ完璧な演技で今年最高の、そして浅田真央史上最高の笑顔を見せてほしいものだ。
(芝公子)