広瀬すずがヒロインを務める連続テレビ小説の「なつぞら」(NHK)において、広瀬の兄を演じる岡田将生の放ったセリフが物議をかもしているという。
6月28日放送の第77話では、広瀬の同級生で菓子職人を目指す山田裕貴が、修行の成果を示すべくバターケーキ作りに挑戦。それを味見した岡田が「普通に美味い!」との感想を口にし、山田を怪訝な顔つきにさせたシーンが視聴者をざわつかせているというのだ。
「本作の時代設定は昭和20~30年代なので、視聴者からは《60年以上も前に『普通に美味い』なんて言葉があるわけない!》との指摘が続出しているのです。それに対しては、《“全然”を肯定の意味で使う例が実は明治期からあったように、『普通に美味い』も当時からあったのでは?》との反論も出ています。ともあれ、この場面であえて『普通に美味い』というセリフを繰り出す必然性を考えた場合、脚本家の意図が理解し難いというのもわからなくはありません」(テレビ誌ライター)
それでは果たして、「普通に美味い」は昭和30年ごろにも使われていたのだろうか?前出のテレビ誌ライターは、伝説のバラエティ番組を例に出し、その説を否定する。
「この《普通に~》は、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)をきっかけに生まれたという説があるのです。そもそもはタモリとゲストとの会話で《ある意味~》という言葉が使われるようになり、これが否定的なニュアンスをまとっていることから、完全肯定を表すために《普通に~》と言うようになったとのこと。この説に従えばこのフレーズはせいぜいここ30年ほどの言葉であり、『なつぞら』の時代に存在しない表現だったと言えるでしょう」
ほかにもテレビ番組がきっかけで流行った言葉は少なくない。たとえば《やるやる、出る出る》という単語の連呼はとんねるずが流行らせたもので、《(心が)へこむ》は松本人志が発信源だと言われている。またジャンケンの定番フレーズである《最初はグー》は、「8時だョ!全員集合」(TBS系)の志村けんが言いだしっぺというのが定説だ。
その一方で、今回の〈普通に~〉については、脚本家が若者感を醸し出すために、時代考証が合っていないことを承知で盛り込んだとの見方もある。ともあれひとつのセリフがバズっていることは、「なつぞら」が普通に人気であることを示していそうだ。
(白根麻子)