平成20年7月、介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会で発表された「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について 報告書」によると、日本で膝痛に悩む患者数は3,000万人といわれているそう。そして、臨床整形外科2007 Vol.42「変形性膝関節症の疫学」(大森豪、古賀良生)によると、50歳以降の男女比(患者割合)では、女性が男性よりも1.5~2倍というデータがあるそうです。
また、ゼライス社(宮城県多賀城市)が、40~70代の膝に違和感を覚えたことがある男女400人を対象に行った調査では、40代男性の9割以上が「痛みはなくても違和感がある」ことが分かったとか。若い頃にはなかった 膝の違和感には、「ポキポキ音がなる」というものがあります。この音を感じたら、ケアを始めるサインかもしれません。
■放置すると重症化!?膝の音はケアが必要なサイン
東京都練馬区にある関町病院の丸山院長は、「膝から鳴る音は膝の軟骨の状態を表しており、軟骨の状態によって3段階の膝音の変化がある」といいます。正常な膝軟骨は関節液に浸っているため、摩擦抵抗が少ない状態。加齢などが原因でこの水分量が減ると、摩擦で膝軟骨が摩耗していき、局所的に圧迫力が増えることで“ギシギシ”“ポキポキ”などの音を感じるようになるそう。
さらに膝軟骨のすり減りが進んで関節の表面がつるつるになると、逆に音を感じにくくなることもあり、滑膜炎により関節液が増えた状態でも音は減少するそうです。でも、生活に支障が出るほどの痛みではなく音もしなくなったからと放置すると、ついには軟骨下骨までがすり減り、音が“ゴリゴリ”“ザラザラ”に変わって、痛みも強く感じるようになってしまうのだとか。
つまり、「最初に膝音を感じたとき」がケアを始めるタイミングということ。一度でも膝音を感じたことがある人は、その後に音がしなくなったらむしろ要注意です。丸山院長は、変形性膝関節症はサルコペニア、骨粗鬆症や認知症とも関連性が高く、その予防としても「膝の音=重要なアラーム」として認識すべきだといいます。
■膝ケア開始度チェック
実は、音以外にも膝のケアを始めたい初期症状があります。丸山院長に「1つでもあてはまる項目があればケアを始める必要がある」チェック項目をうかがいました。
□膝から、いつもと違う音がする
□膝にこわばりを感じる
□動き始めるときに膝の音がする
□曲げ伸ばしすると膝の音がする
□階段を上り降りする時に膝の音がする
□膝が腫れている、または熱感がある
□激しいスポーツをしている、またはしていた
□過去に膝にけがをしたことがある
□座ったり立ったりが多い生活をしている
□最近歩き方が変わってきた
■膝痛重症化の予防策
膝を動かすとポキポキ、ゴリゴリなどの音がするように感じたら、日常生活を見直しましょう。丸山院長によると、膝への負担を軽くするための体重コントロール、正座など膝への負担が高い姿勢を避ける、入浴などで膝を温めて屈伸運動をする、寒さや冷房などで膝を冷やし過ぎない、軟骨構成成分の生産を促進する成分(コラーゲントリペプチド)を摂取する、などの対策がよいそうです。また、関節を守るためには周囲の筋肉が必要なため、膝に過度な負担をかけないで、膝の周辺の筋力を鍛えるストレッチなどもオススメだとか。
生活習慣を見直すだけでなく、音の変化や違和感を覚えたらすぐに医師を受診することも大切です。40代以降は筋肉量が減ってきて膝への負担も大きくなりますから、体からのサインを見逃さずにケアを行いましょう。
(美容・健康ライター Nao Kiyota)